他の豆辞典本 HP 利用上のご注意 | サイトマップ
 
アメリカン・ビジネス
(連載エッセイ)
1.
はじめに
2.
工場用地選定調査 - 1
3.
工場用地選定調査 - 2
4.
工場用地選定調査 - 3
5.
米巨大資本とのJV - 1
6.
米巨大資本とのJV - 2
7.
米国での工場建設 - 1
8.
米国での工場建設 - 2
9.
米国での工場建設 - 3
10. 米国での工場建設 - 4



 
アメリカン・ビジネス: 工場建設の話など、著者の貴重な経験をご紹介します。
4. 工場用地選定調査 第3話
さて、色々な調査項目の中で厄介なのは、組合 (Union) 活動の項目です。アメリカの組合制度の弊害は、北米に進出する日本企業にとって脅威でした。高賃金の上に融通の利かない制度では、日本的な経営が出来ないというのが日本企業の経営者に共通した考え方で、組合化しにくい場所を選べというのが、トッププライオリティーの一つでした。特に、組合は、従業員 200人以上の規模の工場をターゲットにするとも言われていましたが、町によっては小さな町工場のようなところも含め 50% 以上が組合化しているところがある一方で、組合の会社が1社もない町もある、というような現状も見られました。もちろん、我々は組合化率の高い町は避けていったわけですが、ある意味では、組合のない町では、町ぐるみで組合反対のようなムードが感じられたものです。要するに、組合化すれば、企業の競争力がなくなり、結局、レイオフが出たり、廃業したりする企業が増えて仕事がなくなってしまう、というのが組合反対のコミュニティーや人達に一致した見解のようでした。企業を誘致する側の論理は、組合なしでも比較的賃金の高い仕事を提供できる競争力のある企業を誘致できることが一番望ましいのですが、アメリカの大手メーカーは、ほとんど組合化していたので、当時の日本企業は最も誘致したいタイプの雇用者ということだったようです。
Department of Labor の統計資料によれば、2004年のアメリカ労働者の 12.5% が組合員 (union workers) だそうです。ユニオンワーカーの比率は、年々減少して来ましたが、この比率は、業種と地域によって大きく異なります。一番ユニオンワーカーの比率の高いのは、公務員 (先生や警察官、消防士といった職業) の人達で、その比率は、36.4% と年々減少してきたものの、今でも高い数字になっています。 一方、民間企業のユニオンワーカーの比率は、2004年に 7.9% と遂に 8% を切りました。約 20年前には、この 2倍以上がユニオンワーカーであったことを考えると、随分と変わったものです。 民間で、今でも、ユニオン比率の高い産業は、運輸、通信(電話会社)、ユーティリティー(電力・ガス会社)、建設、自動車、製鉄などといった業種です。また、地域別に見れば、アメリカでユニオンワーカーの割合の高い州は、高い州から順に、ニューヨーク、ハワイ、ミシガン、アラスカの順で、人口で見るとカリフォルニア、ニューヨーク、ミシガン、イリノイ、ペンシルバニア、オハイオの順になります。別の見方をすると南部の州では、ユニオン結成率が低いと言えるのです。私が調査をして回った州では、ケンタッキー、テネシーなどは比較的低く、イリノイ、ウィスコンシン、インディアナ、オハイオは高いという状況でした。
ところで、アメリカの南北の境は、中西部で見るとオハイオ川ということが言えます。この川をを境に、南へ行くと南部なまりの英語になるのが良く分かります。シンシナチとかルイビルといった都市は、メトロポリタンエリアがその南北にまたがっており、両方の文化が共存する街ですが、どちらかといえば、シンシナチは川の北側にあり、ルイビルは川の南にある町なのです。当時は、日産がテネシー州の Smyrna というナッシュビルの南にある町に進出していて、そこが自動車労働組合 (UAW) のターゲットになっており、組合が南下してくるという危惧もありました。それでも、南に行けば、組合の心配は減るのですが、必要な機械加工のできる下請けが周りに居ないとか、必要な技能職の人が集められないなどの問題も当時はあったわけです。
当時組合に疑問を感じるアメリカ人の割合が増えつつあったにしても、ユニオン化するところは、テネシーであろうがケンタッキーであろうがありました。工場がユニオン化する一番の理由はひどい待遇ですが、賃金が低く、労働環境が悪いところはユニオン化する可能性が高いというのが定説でした。従って、進出しようとする町の企業にそうした企業がないか、などということまで調べたわけです。そうした調査結果は、事細かにすべて報告するわけではなく、調査結果で疑問の生じたところは、単に候補地から外されていった訳です。良いところを探すのが目的で、すべてのコミュニティーに得点を付けたりするのが目的ではなかったからです。いずれにしても、時間のかかる作業でした。
さて、こうして、アメリカ中西部を中心に、ざっと、100のコミュニティーと 300箇所くらいの候補地を見て回ることになったでしょうか。調査が一通り済むと候補地は、3-4箇所に絞られました。そして、さらに調査をしながらコミュニティーや電力会社などとの交渉を進め、条件を確認したり改善したりする作業があるわけです。道路など周辺インフラの整備やタックス・インセンティブ、電力レートの交渉などは、場所を決めてからでは有利に進めることができせん。そうした作業が、工場用地選定作業の最終ラウンドになるわけです。そうした結果、なんとか、インディアナに 1つとケンタッキーに 1つ、合計2つの工場が建設されることになったのでした。 > 続きは、こちら