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アメリカン・ビジネス
(連載エッセイ)
1.
はじめに
2.
工場用地選定調査 - 1
3.
工場用地選定調査 - 2
4.
工場用地選定調査 - 3
5.
米巨大資本とのJV - 1
6.
米巨大資本とのJV - 2
7.
米国での工場建設 - 1
8.
米国での工場建設 - 2
9.
米国での工場建設 - 3
10. 米国での工場建設 - 4



 
アメリカン・ビジネス: 工場建設の話など、著者の貴重な経験をご紹介します。
3. 工場用地選定調査 第2話
私の工場用地選定調査の仕事は、プロジェクトの話がすぐに実行されなかったこと、また、別の事業部の工場を建設する話が出てきたことなどもあって、5年くらいの間、話が出たり消えたりしながら続きました。一度、調査ををしても、条件は刻々と変化します。 例えば、税率、失業率、電力コスト、組合活動など、2-3年も経つと状況は変わるものです。また、候補の空き地や工場団地のロットがなくなってしまうことも当然起きてきます。それでも、一度調べた土地のデータをアップツーデイトなものにするのは、一から調べ直すのとは大きな差ですし、また、再調査、そして、交渉すべきポイントも絞れましたから、最初の調査が無駄になることはありませんでした。
ところで、現地調査とは、一体どんなものなのかについて少しお話しておきましょう。通常、経済開発局などの担当者に前もって連絡をし、見て回る場所やインタビューなどをアレンジしておいてもらうのですが、そうした人達にもしがらみがあるようで、あそこを見て欲しいとか、こんな人に会って欲しいとかいうことが必ず出てきます。そして、そうしたリクエストにある程度応えることが必要でしたが、中には、州知事に会って欲しいというようなこともありました。また、こちらのスケジュール内に多くの候補地を見て欲しいということでヘリコプターが用意されることも何度かありました。
ある時、インディアナ州北部の地域を調査した時には、シカゴからニューヨーク行きの帰りの便を予約していたのですが、ヘリコプターでシカゴまで送るのでぎりぎりまで候補地を見て欲しいということになりました。そうして工場用地を見て回った後、最後の訪問地からシカゴのオヘア国際空港まで、ゲイリーという町の上を通って、シカゴ南の製鉄工場群のあるところを抜け、ダウンタウンの高層ビルを (下ではなく) 右手に見ながら空港へと向かいました。小さなヘリコプターは、飛ぶ高度も小型飛行機より低く、ミシガン湖の上を飛ぶこともできないということで、そんな航路でオヘア国際空港に入って行ったのですが、その時のことは今でも良く覚えています。パイロットの横に座りヘッドフォーンをつけていますので、管制塔からの指示が良く聞けるのですが、そうして実に小さなヘリコプターでジャンボ機や大きな旅客機の合間をぬって空港に入って行くのは圧巻でした。アメリカで仕事をすると、小さな飛行機には何度も乗りますが、小さなヘリコプターでこうした大きな空港に入っていくのは、一種独特な雰囲気があるものです。
そんなことですから、帳面消し的に人に会ったことも、もちろん、沢山ありましたが、彼らの顔を立ててあげることが、後に、自分の顔を立ててもらうことになるのは、日本もアメリカも変わりません。従って、行った先々の町でのスケジュールは、すべての時間が自分の思うように使える訳ではなかったのです。 また、現地の工場を見学させてもらい、色々な事情を聞いて回ると、良い話ばかり聞かされる結果になりがちなわけです。私がお話を聞いた人達は、担当者が売り込みを行う上で都合の良い人達がほとんどですから、そんなことを考えながら、質問をしたり、その答えから実態を見極めるというプロセスが必要だったのは言うまでもありません。
アメリカの税制では、企業や個人の支払う固定資産税が、学校、警察、消防署などを運営していくための財源になっています。この税率とシステムは、州によって異なるので、州の違ういくつかの候補地の税負担額を比較するのは、困難なことです。基本的には、そのコミュニティーでかかる費用は、そのコミュニティーの人が支払うという考え方ですから、どこへ行ってもそう大差はないと考えるのが普通でしょうが、案外そうではないのです。州の財政が悪いところは、今は良くても将来税金が高くなるし、税率の低いコミュニティーでも人口が増えて、学校を大きくする必要が出れば、その費用を捻出するために増税が必要になります。電力コストなども一緒です。原子力発電に依存する電力会社は、コストが高いし、石炭抱きの火力の発電会社でも公害対策の遅れているところは、将来、コスト高になる危険が高いわけです。そんなことも、調査の対象になるわけです。また、輸送費などでは、州の規制が原因で、州内への輸送費が、州外への輸送費より高くなるなどといったおかしな現象が見られることもあるのです。 > 続きは、こちら