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バックスピンの秘密|ゴルフボールはなぜ飛ぶ

Introduction
パターからドライバーまで どんなクラブでも 必ず ロフトがあるから 球を打った時には 回転量の差こそあれ バックスピンがかかる。また、クラブフェースを オープンにしたり、クローズドにしたりして ボールを打てば サイドスピンがかかって 球は 空中で 左右に曲がる。勿論、どんなクラブとボールを使うか、また、どのような打ち方をするかで スピンの仕方(回転軸の方向とスピン量)は 大きく変化するが 目的に応じて 最適なスピンがある訳で 上級者は それまで考慮して クラブやボールを選び 打ち方を工夫することになる。

例えば、ドライバー ショットで 飛距離を 最大にするには 10° 〜 14° のボールの打ち出し角で バックスピン量を 2,200〜2,600 回転/毎分(RPM)になるようにするのが(キャロウェイ ゴルフによれば)望ましいし、ウェッジで ボールを キュキュッ とバックさせるような ショットをするためには 10,000 RPM 前後のバックスピンが必要になる。

ゴルフボールのスピンの実態

三方向のスピン
一方、ボールが その進行方向に対して 前後左右に傾いていない水平な軸を中心に回転していれば ボールは純粋なバックスピンをすることになるが、人間がボールの横に立って、斜めに傾いたプレーンの上を クラブヘッドが様々な軌道(アウトサイド・イン、インサイド・アウトなど)とフェース面の傾き(オープン、クローズド)で ボールにコンタクトをする訳だから、少し傾いた軸を中心に ボールは回転することになる。結果として、バックスピンに 図のような サイドスピンやライフルスピンの要素が入ることになり、そのスピンの軸の傾きの程度によって、様々な弾道のボールが出ることになる。多くのゴルファーの悩みの種であるスライスは サイドスピンによって起こるもので 図の青のラインの方向のスピンが その原因だ。

かなり大雑把な数字であるが、ターゲットに対してフェース面を 3°オープンにして、ドライバーでボールを打てば、バックスピン = 3,000 RPM に対して、サイドスピン = 600~800 RPM、そして、ライフルスピン = 50〜80 RPM といったスピンになるそうだ。同様なことを 9番アイアンですれば それが B = 8,000 RPM、S = 200 RPM、R = 200 RPM くらいの数字になるという。いずれにしても、実際のボールのスピンには ライフル銃の球の回転のような ボールの進行方向の軸に対する(グリーン方向の)回転もあって、本来、ボールの挙動は オレンジの矢印方向のバックスピンと合わせ、計三方向の回転の影響を受けるというのが実態だ。

バックスピンと揚力

揚力とは言え、ゴルフボールの挙動を理解する上で 最も重要なスピンは バックスピンである。そして、バックスピンについて まず 知っておきたいことは バックスピンと揚力、即ち、空中でボールが浮き上がろうとする力の関係である。バックスピンがかかったボールでは 図のように ボールの上の空気層が回転に助けられてより早く流れるのに対し、ボールの下の空気層では ボールの回転の動きによって流れが阻害され 流速が落ちるという現象が起きる。その結果、ボールの下の方の空気の圧力が 上からの圧力より大きくなって、下から上に向かってボールを浮き上がらせる力、揚力が発生する。また、同様の原理で、サイドスピンがあれば、ボールは左右に曲がることになる。

さて、前述のドライバー・ショットで 飛距離を 最大にするためには 10~14°のボールの打ち出し角で スピン量が 2,200~2,600 RPM になるのが 最適と書いたが、それはボールが進行方向に進もうとする力と揚力が 上手くバランスした時に 最適化され 飛距離が最大になるということを 意味するものだ。下図を見て欲しいが、打ち出し角が 低過ぎたり スピン量が不足していれば ボールは 早くドロップしてしまうし(赤の弾道)逆に 打ち出し角が 高過ぎたり、スピン量が多過ぎれば ボールは吹き上がってしまい(緑の弾道)飛距離を伸ばすことはできなくなる。

ドライバーの飛距離とバックスピン量の関係

最近のドライバーは 重心が低く、重心深度の深いクラブという設計コンセプトで高弾道、低スピンというアプローチのクラブが多く出回っているが、それは重心深度の深いクラブのギア効果(詳細後述)の利点を上手く使うことが出来るからである。

ギア効果(横方向)ギア効果とは トウサイドで打ったボールが フック系の球に(右イラスト参照)また ヒールサイドで打ったものは スライス系の球になるようなボールのスピンに係わる効果だが、打ち損ねたボールを ターゲットに戻したり、ボールを故意に左右に曲げたりするのに極めて有効な現象で、これは ヘッドの重心深度、フェースのどこにボールが当たるか(オフセンターの度合い)、そして、ヘッドスピードによって決まると言われている。一昔前に メタルウッドが上級者に好まれなかった理由は、スチール製のメタルウッドの重心深度が浅いので そうしたボールのコントロールが思うように出来なかったためである。また、フェースの水平方向の丸み(バルジ)は、そうした現象を考慮して、フックするボールが 最初は右に出て 空中でセンターに戻るという形で 方向性が良くなるようにと考えられた工夫の表れである。

ギア効果(縦方向)最近のドライバーは 低重心のクラブが主流になっているが、そうしたモデルは 左右のギア効果だけでなく 上下の丸み(ロール)からの ギア効果(右イラスト参照)を上手く利用して スピン量を抑えながらも 高弾道のボールが打てる という設計コンセプトを取り入れたものだ。重心深度がある程度以上のドライバーやフェアウェイウッドのようなクラブでは 低重心にすれば ギア効果を生むフェース面積を フェース上部だけでなく 中心に近いところまで広げることが出来、そうしたデザインで 安定して飛距離の出るボールが打てるように工夫しているクラブが多い。また、高弾道・低スピンで 飛ぶボールを 打てる工夫としては、より低重心にして重心深度を浅くするという選択肢もあり、クラブによってはそうしたデザイン・コンセプトで製造されているものもある。低重心のメリットは ギア効果を生むフェース面積をフェース上部だけでなく、中心に近いところまで広げることが出来るから 高弾道・低スピンという(飛ぶ)ボールをクラブフェースのスウィート・スポットかそれよりも少し上で打つ限り 打つことが出来ることである。さらに、スウィート・スポットより下にボールが当たるような 普通なら 低い弾道になるショットでも ある程度ボールを上げてくれるという 優れたクラブになるというメリットもある訳だ。一昔前のクラブは 高弾道にすれば 高スピンになってボールが吹き上がり飛ばすことが出来なかった訳だが、この設計コンセプトによって(特に、バックスピン過多で 飛距離を伸ばすことが出来なかった人は かなり 飛躍的に)ボールを飛ばすことが出来るようになった。 » ギア効果 (Gear Effect) 飛ぶボールを打つ鍵

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ボールの硬さとバックスピンの関係

一方、ゴルフボールを打った時のボールの初速とパックスピン量、および、揚力、即ち、弾道と飛距離は ゴルフクラブのスペック(主に、ロフト、重心深度、シャフトのキックポイント、フェース面の形状や反発係数、グルーブ)と ゴルフボールのスペック(主に、コアの硬さ、カバーの特性、ディンプルの形状やパターン)、そして、スイング(主に、ヘッドスピード、ボールが コンタクトするポイント、スイング軌道、フェース面の向き)に左右される。

中でも、ゴルフボールの硬さとスピン量、ならびに、ボールが打ち出される初速の関係は注目に値するものだ。まず、ボールの硬さについては 1)ドライバーでのフル・スイングのように早いヘッドスピードでボールを打った時のボールの硬さと 2) ロフトのあるウェッジのようなクラブでボール打ったり、チップショットやパットの時に感じるボールの硬さ の二通りがある。

ドライバーショットのように ロフトの小さいクラブで速いヘッドスピードのショットをした場合、クラブヘッドにボールがコンタクトする瞬間に ボールはつぶれるように変形するが、その変形の度合いを示すものが コンプレッションである。通常、ボールの初速は コンプレッションの大きなものの方が早くなるものの、バックスピンが必要以上に多くなるという難点がある。また、ルールでボールの初速は 指定された条件下で測定された時、規定されている上限(R&Aテスト内規)を越えてはならないと定められているので、その条件内で 飛距離が伸びるよう コアのコンプレッションやディンプルに 様々な工夫がなされている。

他方、ロフトのあるウェッジのようなクラブでボールを打つ場合は 逆に バックスピンが多くなる方が 通常は 望ましいし、柔らかな打感のボールが好まれる傾向もあり、飛距離が重要なショットに望ましいボールの特性とは異なったニーズがある。そうしたバックスピン性能や柔らかな感触の多くは カバーの素材の材質に大きく依存するものだ。カバーが柔らかく 弾力性のある(ウレタン樹脂の)ボールの場合は クラブフェースに彫ってあるグルーブ(溝)に そのカバーの素材が確り食い込んでスピンが良くかかる訳だが、比較的硬く 弾力性に欠けるサーリン・カバーのツーピース ボール(比較的安価なボールは 殆どがこのタイプ)では そのスピン性能が 大きく落ちるという 現象が見られる。つまり、ウェッジでのショットやアプローチショットは 使うボールによってスピン量が大きく異なるということである。言い換えれば、ツーピースのボールでは ショートゲームで バックスピンの良くかかったボールを打つことは難しいと言うことなのだ。 » 詳細

バックスピンで止まるボール

プロゴルファーが ウェッジで 100ヤード前後のショットを打った時のスピン量は 10,000 RPM 以上になるが、そうしたボールが 柔らかいグリーンに落ちれば ボールが大きくバックすることになる。アマチュアゴルファーの中には そのようなボールを打つことが出来ない人も多いから テレビ中継などで そうした場面を見ると どうしたら あのようなボールが打てるのだろうと思って居る人も沢山居ることだろう。

バックスピンそうしたバックスピンをかけるメカニズムは 卓球のカット・ショットやテニスのスライス・ショットを打つメカニズムと同じで ボールの当たるフェース面を ボールを飛ばす方向に対して直角ではなく、45°~60° 程度 上に向け、ダウンブローにラケットやクラブを振ってボールに大きなスピンをかける訳だ。その時に ボールは フェースの向いている方向に飛び出すのではなく 図のように少し低い角度で飛び出すという現象が起きる。より多くのスピンをかけたければ ラケット面やクラブフェース面にボールが当たる瞬間に 大きくフェース面を(下ばかりではなく)前に加速して動かせば良い。フェース面の開き方とクラブの振り方でボールの飛び出す角度とスピード、そして、スピン量が決まるが、バックスピンの効いたショットを上手く打つためには それらを コントロールするコツを 何度もボールを打つことによって学ぶ必要がある。

具体的には、ロフトのあるクラブのフェースを少し開いて ややオープンスタンスで ボールをスタンスの中心か 少し後ろ気味に置いて 体重を 7 : 3 - 6 : 4 の割で 左足よりに乗せて構え ダウンブローにクラブヘッドを なるべくフェースが開いた状態で 加速させながら ボールとコンタクトするように(手首を返さないで フェース面の向きをあまり変えずに)ボディーターンを使って打つようにすれば 上手く行くはずだ。クラブのフェースを 少し開き バウンスを上手く使うえば フェースの動きは 自然と前に滑るように加速して動くことになるが その手首を返さずにソールを地面にぶつけて クラブヘッドを前に滑らすように動かすテクニックを覚えれば(ただし、練習場のマットの上では 練習し難いテクニック)少し低い弾道の よりスピンの効いたボールが打てるようになるだろう。それが出来れば 洋芝のフェアウェーでは 長く、薄いターフが取れるはずだ。

なお、以下の動画のように あまり距離のない チップショットや ピッチショットでも ロフトのあるクラブのフェースを開いて ダウンブローにクラブを落とす打ち方で 比較的 低い弾道のバックスピンの良くかかった グリーン上ですぐに止まる ボールを打つことも出来る。

ただし、同じ打ち方をしても ボールとクラブフェースが スイングを通じて 直接コンタクトすることが難しいラフからのショットでは スピン量が小さくなってしまう。そうしたショットでは、クラブフェースとボールの間に芝や芝から出る水が入り込むことが バックスピンが少なくなる理由であるが、溝の体積の大きな U グルーブ(角溝)のウェッジは その水の影響を 最小限にすることが出来る。そのため、そうしたクラブは プロゴルファーの競技では 2010年から また 近年は トップアマの出場する競技でも その使用が禁止になっている。 » クラブフェースの溝に係わる新ルール

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