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ストロークス・ゲインド|解説

Introduction
近年は PGA のゴルフ中継などで解説者がストロークス・ゲインド (strokes gained) で見ると松山選手のショット力は凄いのですが ... などと言っているのを耳にすることがある。しかし、ストロークス・ゲインドって 何 ... と思っている人も少なくないでしょう。ストロークス・ゲインドとは ツアープロゴルファーのスキルレベルを技術分野ごとに示す統計データを意味する言葉の接頭語のようなもので ストロークス・ゲインド パッティングと言ったら 選手のパットの実力を示す指標 所謂 スタッツの一つで「パット貢献度」などと訳されることもある。

ストロークス・ゲインドの種類

PGAStrokes Gained (SG) と言う英語を和訳すると「打数を何で稼いでいるのか」と言うニュアンスになるが ドライバー、アイアン、アプローチ、パットなどの技術力を示すために PGA では 以下の 6 カテゴリーの SG データを公表している。(さらに 細かいデータもあるが その説明は 別の機会にすることにしたい。)

(1) Strokes Gained Putting (SG: Putting)

(2) Strokes Gained Tee-to-Green (SG: T2G)
(2a) Off-the-Tee (par-4s and par-5s tee shots)
(2b) Approach-the-Green (outside 30 yards 含む par-3s tee shots)
(2c) Around-the-Green (any shots within 30 yards)

(3) Strokes Gained Total (SG: Total)

その意味の解説

簡単に言えば 上述 (1) は パット貢献度であり、(2) は ティーからグリーンまでの間に打つショット全般の貢献度だ。(3) は (1) と (2) を合わせた 総合力を示したものだが、あくまでも、SG の基本的な考え方は トーナメントに出場する選手全員、即ち、フィールドの他の選手のパフォーマンス (平均値) に対する相対的な力量の差を数値化したものである。このシステムを考え出した考案者が提案した統計学的データ処理のための数式をベースに算出した数字で比較しようと言う意図のデータである。(2) のショット全般の力量は やや正確さを欠く言い方になるが (2a) ドライバー、(2B) アイアン、(2c) アプローチの合計である。もし、これらのデータの精度が高ければ 総合力である SG: Total のランクと平均スコアのランキングは ほぼ一致することになる訳だが 下のテーブルにあるように そこまで "キッチリ" 一致はしていない。とは言え、目的である パット力、ショット力を評価するには 極めて有意義なデータだと言える。因みに、以下は 少し古いデータになるが 2017年の全米プロが終わった時点のデータに基づいて 2017年シーズンの平均スコアがトップ 5 の選手の各種ストロークス・ゲインドのデータを比較したものである。

平均スコア トップ5 平均スコア SG: Total SG: Putt SG: T2G
1) Rickie Fowler 68.954 2.224 (1) .896 (1) 1.328 (11)
2) Rory McIlroy 69.050 2.029 (3) -.077 (131) 2.106 (1)
3) Jordan Spieth 69.064 1.818 (4) .287 (52) 1.531 (6)
4) 松山英樹 69.281 1.615 (9) -.167 (147) 1.782 (3)
5) Sergio Garcia 69.499 1.050 (23) -.399 (180) 1.449 (9)
PGA 平均 71.179 0 0 0

この時点で 平均スコア 1位は Rickie Fowler の 68.954 だったが、PGA ツアーのフィールドの平均スコアが 71.179 だったから Fowler は それより 2.225 打上回っていた訳である。一方、SG: Total は 2.224 だから その数値は ほぼ一致していた。そして、それは パットで 0.896打、ショットで 1.328打 稼いだ結果だと分析される。他方、2位の McIlroy は ショット力で 2.106 打も稼いでいるが、パットで 少し (0.077打) ロスしていることになり、SG: Total は 2.029 (実際の差は 2.129) であった。因みに、SG のカッコ内の数字は PGA のランキングで McIlroyの このシーズンのパット力は PGA の選手中 131位だったと言うことだ。上のテーブルで グリーンは貢献していることを意味し、レッドは 足を引っ張っていることを意味している。

また、(2a) ドライバー、(2B) アイアン、(2c) アプローチ と始めに説明したが それらについては 下表 a) b) c) の英語表記になっており 日本語にすれば a) ティーショット、b) グリーンへのショット、c) グリーン周り (30-yard 以内) のショット と言うことになる。以下は それぞれのジャンルの トップ 3 の選手名と その貢献度を纏めたものである。

# a) Off-the-Tee b) Approach-the-Green c) Around-the-Green
1 R. McIlroy (1.445) F. Molinari (1.012) Jason Day (.516)
2 D. Johnson (1.029) J. Spieth (.968) Ian Poulter (.499)
3 S. Garcia (1.013) P. Casey (.927) L. Donald (.495)

さて、ここまでに紹介した SG のデータを見ると分かる思うが ショット力がない選手が上位に食い込むことは 殆ど 不可能と言うことだが、パットは 1位と 180位の差が 1.3 ストロークと実力の差が ある意味 小さいとも言えよう。一方、ショットは 180位の選手が -.645 で 1位の McIlroy とは 2.75打差もあり 実力差が パット以上に大きいことが分かる。因みに、Fowler は Garcia に 1 ラウンドで ほぼ 1.3 ストロークの差をパットで付けている計算だ。また、SG は どのジャンルも 110位前後が 0 になるようで そんなパフォーマンスがシーズンを通して出来れば シード権確保のフェデックス・ポイント 125位を獲得できるという目安にもなる。

もう理解頂けたと思うが SG: Putting が 0.5 の選手は 平均的な選手より 1ラウンドで 0.5打 パットで稼いでいて パットがその分上手いという評価で 逆に それが -0.5 であれば パットで 1ラウンドに 0.5打の損をしている計算で パットが下手だと評価される訳だ。

このスタッツが出現した背景

スタッツ (stats) とは statistics つまり「統計」という意味の言葉の略称である。しかし、スポーツの世界でスタッツと言えば 選手やチームのプレーの結果を数値化してデータ処理をし、プレーの傾向を分析したり、強み弱みを把握する目的で使う パフォーマンス・スタッツのことを意味するのが一般的だ。そんなパフォーマンス・スタッツの多くは 何かの平均値、または、どの位の確率で何かを達成できるのか or 失敗するのかといった選手の能力に係わるデータである。平均値を示すものには 平均スコア、平均パット数などがあり、確率を示すものには フェアウェイキープ率、バーディー率などがある。そうした意味では SG というスタッツは 一味違ったものだ。基本的には こうしたデータを見れば それぞれの選手のスコアリングの傾向、また、強み弱みなど、パフォーマンスに係わる実力が見えてくるはずだが 平均値のようなデータでは誤った評価につながることもある。

パッティング
例えば 平均パット数 (overall putting average) 即ち 1ラウンドに何パットするかでパッティング能力を評価しようとしても 本当のパット力の評価は出来ない。寄せの上手な人は パットがあまり上手でなくとも 平均パット数は低くなるし、その逆も 然りである。また、ショット力の差によって ファースト・パットの難易度に 差が出るのも事実だ。そうした観点から PGA や LPGA で パッティング能力の比較は パーオンしたホールのパット数だけをベースに計算した平均パット数 (putting average) を引き合いに出して 論じるのが慣例だった。因みに、PGA の 2016-2017 シーズン 8月 全米プロ終了時点の overall putting average で 1位の選手は 1.502-stroke である。ただ、このスタッツの上位選手の成績は 然程 良くない。それに対して パーオンした時のパット数 即ち putting average で 1位の選手は 1.696-stroke となっていて、このスタッツの上位者は 成績上位の選手が殆どである。このように スタッツの見方、使い方は その意味を十分に理解した上で 利用しなければ 価値が半減してしまうものだが、パーオンした時のパット数のように 一見 十分なデータのように見えるものでさえ (2a) の ショット力の差が勘案されていないので パット力の評価としては片手落ちなのである。"SG: Putting" は 各選手のパット力を距離のファクターを織り込んで計算し直したものと言える。パットの難易度をデータに反映させることには 限界はあるが 距離のファクターが織り込まれた意義は大きいと言えよう。ドライバーのショット力においても 飛距離とショットの正確さ、アイアンショットにおいては 残り距離と打ったショットのピンからの距離などのデータを織り込んだデータと言う意味で ストロークス・ゲインドのデータの出現で ドライバー飛距離、フェアウェイキープ率、パーオン率などだけでは評価できなかった 各選手のプレーの傾向や強み弱みの把握が より高次元に出来るようになった訳だ。

ストローク・ゲインド
進化したパフォーマンス・スタッツ (統計データ)

近年、PGAでは 各選手のティーショットから 最後にホールアウトするパットまでのデータが全ホールにわたって採取される。それは 膨大な量のデータであるが そうしたデータ処理の能力が飛躍的に伸びたことから 様々な統計データを取ることが可能になった。特定の距離、例えば、10 feet からの全選手の平均パット数を出すことも出来る。同様に、誰が ピンまでどの位の距離のショットでグリーンに乗せたか というようなデータも収集されるから 特定の距離からグリーンに乗ったパーセンテージのようなデータさえ計算できるのだ。そうした状況の変化を背景に 2011年から新たに導入されたのが ストロークス・ゲインド なのである。

以上がストロークス・ゲインドとパフォーマンス・スタッツの説明だが 前述のスタッツ以外にも注目度の高いものが幾つかある。ドライバー飛距離 (Driving Distance)、フェアウェイキープ率 (Driving Accuracy)、パーオン率 (GIR)、サンドセーブ率 (Sand Save)、連続予選通過 (Consecutive Cuts) など、また、賞金ランキング (Money Leaders)、FedEx Points や世界ランキング (World Golf Ranking) なども ある意味 パフォーマンス・スタッツと言えるだろう。

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