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日本のゴルフ場が消えていく危機

Introduction
政府・与党は 2016/11/24日 平成 29年度税制改正で ゴルファーが支払う地方税「ゴルフ場利用税」の廃止を見送った。同税をめぐっては 五輪で ゴルフが正式種目となったことを受けて 関連団体の廃止圧力が強まっていたが 税収減を懸念する地方自治体が猛反発し 与党内でも 廃止した場合の代替財源の確保のメドが立たないため 廃止を断念した経緯がある。

減少の一途を辿る ゴルフ人口

ところで ゴルフ業界の 2015年問題とも 2020年問題とも 言われる ゴルフ人口の長期減少化に伴って 倒産する ゴルフ場が続出するという問題を ご存知だろうか。団塊の世代の高齢化と 若者のゴルフ離れという問題が深刻な中、恐ろしい局面が待ち受けているという問題である。2016年は 2011年に比べ ゴルフ人口が 17% 減、ゴルフ施設入場者数で 10% 減という試算もある。

実は 日本人の約 30% 概ね 3人に 1人 は ゴルフの経験者である。しかし、現在も 継続して ゴルフをしている人は その約 1/5、全体の僅か 6% 程度だ。つまり、100人中に 30人も居るゴルフ経験者の内 24人は 止めてしまい 以前は したが 現在は やっていないという状況なのだ。言うまでもなく、止めてしまった理由に 経済的な負担を挙げる人は 多い。また、ゴルフ未経験者に ゴルフをしない理由を尋ねると その回答のトップは お金がかかりそうだからで ある調査では その割合が 62.4% にも達している。近年、ゴルフ料金は 需要が低迷する中 供給過多が顕著になり始めており 一時に比べれば遥かに手頃になったものの それでも まだまだ 高いと感じる人は 多く ゴルフ人口減少の最大の理由になっている。因みに、ある調査で ゴルフコースを選ぶ際に重視するものは 何か? との質問に 回答の上位は (1) 価格が手頃 (77.8%)、(2) アクセスが良い (58.7%) であった。

ゴルフ場利用税の実態

ゴルフ場利用税は 地方税法に基づき ゴルフ場が所在する都道府県が ゴルフ場を利用する人に対して 1日当たりの定額で課す税金である。(ゴルフ練習場は その対象外)我々が ゴルフ場で プレーする時に支払う料金には 消費税が課されるが それとは別に この税金が課される訳で ゴルフ場利用 1日に対する最高税額が 1,200円、標準税額 800円で、通常、高齢者を除く 成人が ゴルフをすると 600円 ~ 1,200円の利用税が ゴルフ場の等級によって徴収される。個々のゴルフ場の利用税額は 最高額の範囲内で それぞれの地方自治体が独自に決めることが出来 その税収の 7割は ゴルフ場のある市町村に交付される。

一方、ゴルフ場利用税は ゴルフ料金の低下にも拘らず 一定額で科されるから その料金に占める税の割合は 極めて 高くなっている。昼食と税金コミで 4000円 ~ 5000円といった低料金のゴルフ場でも 600円は 徴収される。仮に、5000円の料金のケースで その内訳を見ると 消費税 8% で 以下のようになる。

 ・ ゴルフ場利用税 600円
 ・ 昼食 1000円(内消費税 74円)
 ・ プレー・フィー 3400円(内消費税 252円)

このケースの税金総額は 926円で 率にして 926/4074 = 22.73% である。仮に、このゴルフ場が 人が入らないからといって、4000円に 料金を下げたとしても 通常 ゴルフ場利用税 600円は 変わらないから 税金の割合は 866/3134 = 27.63% にもなる。さらに、各種割引や無償で提供しているサービス、手数料などを差し引くと 実際に ゴルフ場の懐に入る収入は さらに減額されることになる。そんな ゴルフ場が稼働率を上げるため また より多くの人に ゴルフを楽しんでもらう目的で ハーフ (9ホール) だけ プレーしてもらえるような 時間のない人向けのプランを 企画し 2300円 で オファーしたとすると そのプランの税率は (600円 + 176円) ÷ 1524円 だから 50.92% にもなる。それが ゴルフ場利用税の実態で 企業努力で ゴルフ場が倒産を回避しようと考えても 打つ手が限られる原因にもなっている。加えて、ゴルフ場利用税がなければ 2000円で 昼なし ハーフのような若者向けのプランが可能になり、ゴルフ人口の低下に歯止めをかけることも 可能なのに そうしたこともやり難くなくなっているのが現実だ。

ゴルフ場利用税の問題点

ゴルフ料金が高止まりする大きな理由の一つに 税金がある。ゴルフ場が支払ったり 徴収している税金は 多い。主なものだけでも ゴルフ場利用税、消費税、固定資産税、法人税がある。ちょっと古いデータだが 日本ゴルフ場事業協会(NGK)による平成 6年の調査では 1コースあたりの固定資産税の平均納税額は 約 1603万円だったそうだ。消費税、固定資産税、法人税は 日本で ビジネスを行う限り 支払う義務のあるもので それが負担になって 事業を続けることが出来ないようであれば 倒産もやむを得ないが 他のビジネスに 課せられることのない ゴルフ場利用税のような特別な税金が負担になり 倒産に追い込まれる企業があるとすれば それは 理不尽で 非生産的なことである。結果として そうした企業が支払うはずの 消費税、固定資産税、法人税も 社会は 失うことになる。ゴルフ場利用税からの税収減を懸念する地方自治体が 利用税廃止に猛反発するのは 分からないでもないが ただ反対するだけでは 自分で自分の首を絞めかねないのが ゴルフ場利用税の問題であることを 政府や地方自治体は どれだけ理解しているだろうか。

バブル期前後の ゴルフ人口が 1400万人で ゴルフ場の数が 2000 だった時代と ゴルフ人口 700万人に対して 2300 もの ゴルフ場がある時代の考え方や制度が同じでは 上手く行かないのは 当たり前。今のままでは 若者のゴルフ離れが進み ゴルフ人口 350万人 ゴルフ場 1000 という時代が 近未来に 到来するかも知れない。そうなったら 社会への影響 特に ゴルフ場の多い地方自治体への影響は 極めて 大きなものになるだろう。気付いていない政治家や役人が多いだろうが 早急な ゴルフ場利用税の見直しをしなければ 大変なことになる。2015年から 2017年までの僅か 2年間に 93 ものゴルフ場が封鎖されたが そのペースで ゴルフ場が封鎖されれば 20年後に 日本のゴルフ場は 1400 を下回ることになる。今後、団塊の世代が ゴルフから リタイアし 若者のゴルフ離れが顕著になれば ゴルフ場封鎖のペースは 一気に加速され 10年くらいのスパンで ゴルフ場の数が半減することになっても不思議ではないだろう。そんなことになれば 直接的な打撃を受けるのは まず 倒産に追い込まれる低料金のゴルフ場だが あまり目に見えない形で しかし 非常に大きな負担になって 一般市民に及ぶことになるだろう。そして ゴルフは また 遠い昔に そうだったように お金持ちだけがやるゲームになり ゴルフ場利用税撤廃など どうでも良い話になるだろう。

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税制改変への提案

ところで 1989年に消費税が導入された時に廃止された娯楽施設利用税だが ゴルフだけは その時に 担税力があるからという理由で ゴルフ場利用税という名前に変えて残されてしまったという経緯がある。日本のゴルフ人口が 1400万人、ゴルフ場が どんどん新設されて ゴルフをするのに 1日 何万円も使う人達が大勢いた時代の話である。しかし、ゴルフ場は その後 ゴルフ人口減少、料金低下、そして、会員権の収入や名義書き換え料収入が激減し 1989年当時とは 比べ物にならない厳しい経営環境に 近年 直面している。また、昨今の日本のアマチュア・ゴルファーの平均年収は 700万円程度で 1000万円以上の年収のゴルファーは 全体の13%程度だというデータもある。加えて、社用で ゴルフをする人が激減したという状況もあり ゴルフ場側にも ゴルファー側にも 担税力があるとは とても 言えない状況になっている。

2011年公布、施行されたスポーツ基本法によって スポーツを通じて 豊かで健康的な生活を営むことが国民の権利であり スポーツ振興を図ることは 国・地方自治体・スポーツ団体の義務であると定められたことも勘案すると 引き続き ゴルフ場利用税を残す という決定は 理解し難く 関係者にとっては 当然ながら 受け入れ難いものだ。自民党への政権交代が行われた時に 地方自治体の財政に配慮した形で ゴルフ場利用税廃止の要望は 聞き入れられなかった訳だが 却下ではなく 小委員会の継続審議となっているそうだ。しかし、日本でのオリンピック開催が決定し 消費税が 8% に切り上げられたにも拘わらず ゴルフ場利用税の見直しがなされないのは 腑に落ちない。このままでは 国を挙げてのゴルフ・バッシングと思えるような状況であり ゴルフが オリンピック競技でもあることを考えると そうした国で オリンピックを開催する資格が果たしてあるのだろうかという疑問さえ湧いてくる。

そもそも、地方自治体の財源に占める ゴルフ場からの税収の割合が高い という事実自体が 常識的には 理解し難いことである。しかし、直ぐに この財源を別のものに切り替えることが 現実的でないことは 分からないでもない。ただ、このままでは 前述のように 地方自治体は 将来的に ゴルフ場利用税と言う財源を失うだけでなく ゴルフ産業とそれに関係の深い個人や企業からの税収も失うことにもなり兼ねないと言う現実を直視すべきである。そんな危惧される将来に対して 早急に 適切な措置を講じなければ 大変なことになる。撤廃が無理なら 改変すべきところを見つけて変える。それが 今できる最善の対策では ないだろうか。

そこで まず 考えるべき点は 税の公平性と 合理性である。ゴルフをすれば 1日分の利用税が課される現行制度は まずもって 不公正であり 不合理である。そして、年齢性の非課税枠も 見直す必要性があるように思える。ゴルフ場の利用 1回に対する課税ではなく プレーフィーに対して 一定の税率 例えば 5% のような徴収方法なら 比較的 公正で 合理的なものになるはずだ。また、高齢者の非課税枠は 税率 5% のような形にするのであれば 撤廃した方が良いだろう。平日に 時間のある 高齢者は 割安な料金で もともと プレーしている訳だし ゴルフに限って 高齢者の経済的負担を大幅に軽減する必要性があるとも思えない。今後は 高齢者のゴルファーの割合が増える訳だから 税収確保の観点からも 合理的である。65歳を過ぎても 働く人が増えた昨今 現行の年齢性 非課税枠は 不公正で 不合理と言わざるを得ない。経済的な理由で あまり ゴルフをすることの出来ない若者の負担を軽減し 若者のゴルフ参加率をアップさせるためにも リーズナブルで バランス感覚のある措置が必要なはずだ。もちろん、税率については 慎重に決定すべきものと思うが 地方自治体の中長期的な財源確保の視点と 税の公平性に鑑み 当面は こうした改革を進めることが ゴルフの将来 そして ゴルフ場の多い地方自治体にとっては 大きな違いになって表れるものと思う。将来的には ゴルフ場利用税を無くす方向で交渉を進めるにしても こうした 暫定的な措置も考えてみては 如何だろうか。

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