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クラブヘッドの重心

Introduction
重心 質量の中心、重力の作用点が重心 (Center of Gravity) である。ゴルフクラブは そのヘッドの重心の位置によって クラブの座りや それを振った時のヘッドの挙動、感触、そして、それで打った球の弾道も大きく変わるものである。従って、どのクラブも そのヘッドの重心によって左右される 様々なクラブの特性を 目的に応じて最大限に活かせるデザインになるよう 工夫が凝らされている。ここでは 正しいクラブ選びに不可欠な そうしたクラブヘッドの重心に係わる知識と そのパフォーマンスへの影響について解説する。

クラブヘッドの重心

重心クラブヘッドの重心は クラブフェースのスウィート スポットのような二次元の概念とは異なり、所謂、三次元の概念である。右と下の図を見て確認して欲しいが、それが (1) ソールから どの位の高さにあるか、(2) シャフト軸から どの位離れているか、(3) クラブフェースから どのくらい奥まった位置にあるかで クラブの性能や特性は大きく変わる。(1)は 重心の高さ、(2)は 重心距離、また、(3) は 重心深度だが、図のようにシャフトと重心の位置によって決まる (4) 重心角もクラブの特性に多大な影響を及ぼすものである。

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(クラブヘッド・重心の参考例 - ヨネックス i-EZONE Driver の仕様 - 出典: YONEX サイト)

重心とクラブの特性の関係

重心 重心の高さと重心深度はボールの打ち出し角とバックスピンに影響を及ぼし、重心角はフェースの返り易さとサイドスピンに影響を及ぼすものだ。因みに、クラブには 図のように重心がシャフトの真下に来るような位置関係で静止しようとする方向の力が働くが、重心深度が深ければ(ヘッドの大きさが同じであれば)重心角が大きくなり、フェースが返り易くなるから ドローが出易いクラブになる。重心角が大きくなれば スクウェアーに構えたクラブフェースをクローズドな方向に動かそうとするより大きな力が働くからである。

下図は 重心位置を変えられるドライバーの可変式ウェイトが二つあるモデルのウェイト位置を重心角が最小と最大になるような設定にした時の重心角の違いを示したものである。その実測値は 17° : 22° であるが 重心角を最大にするには フェース側のウェイトは ヒール寄りに そして もう一つのウェイトは フェース面から離れる方向に動かせば良い訳だ。この 5° の違いが どのくらいの差になって現れるかは 個人差があろうが スライスに悩んでいる人には この重心角最大か それに近い設定にすれば スライスが抑えられる可能性が高くなる理屈だ。ただし、ドロー系のボールが持ち球の人が そうした設定にしてしまうと 引っ掛けが多発したり、フックが大きくなり コントロールし難くなる可能性が高まるから要注意である。

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シャローフェース 一方、重心の高さという観点から 低重心のクラブがある。ドライバーより、ティーアップしていない球を打つことが多い アイアンやフェアウェイウッドなどで良く見られるデザイン フィーチャーで 球が上がり易いクラブにするために重心を低くするという考え方のクラブだ。ターフが取れるような打ち方ができない人には 少し薄く当たった ハーフトップ気味のショットでもボールが上がり、距離のロスが少ないから 重宝するものである。ソールの厚いアイアンの多くは そうしたデザインだと考えて良いだろうし、フェアウェイウッドで フェースの高さのないものは シャローフェースなどとも呼ばれるが 低重心のクラブでボールが上がり易いという特徴がある。図の B がシャローフェースのクラブであるが A のようなクラブより重心は低くなる。最近は この手のフェアウェイウッドが多い。

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ギア効果 (Gear Effect)

バルジとロール重心深度の影響は他にもある。それは ボールの打ち出し角とサイドスピンやバックスピン量を大きく左右するギア効果と呼ばれる現象への影響である。最近のドライバーは 高弾道・低スピンのボールで飛ばすという思想で作られたクラブが主流だが、クラブの重心深度とロフト、さらには、クラブフェースの形状、即ち、バルジ (Bulge) と ロール (Roll) が ボールの挙動を決定付ける要素として 極めて クリティカルな役割を果たしているのである。

ギア効果ギア効果とは トーサイドで打ったボールがフック系の球に、また、ヒールサイドで打ったものは スライス系の球になるという効果であるが、打ち損ねたボールをターゲットに戻したり、ボールを故意に左右に曲げたりするのに 使い方次第では 極めて 有効なものだ。ドライバーのような重心深度の深いクラブのフェースが平面であれば ボールは 右図 (1) のように 大きなサイドスピンが生じて ボールのコントロールは 極めて難しくなり 打球は ターゲットから大きく外れ易くなる。一方、クラブフェースの中央を僅かに膨らませるような形状にすることで サイドスピン量と打球の軌道を (2) のように コントロールすることが可能になる。フェース中央が膨らんだ形状はバルジと呼ばれるが 重心深度とバルジの形状のバランスが上手く取れていれば ギア効果でターゲットの方へボールが飛び易くなる。重心位置によって最適なバルジ形状は ほぼ決まるが、そうした観点から、それぞれのメーカーが様々な工夫を凝らしている。

グラファイトシャフトが普及していなかった頃は D0 のクラブが 男子の平均的ゴルファー向けで D2, D3 のクラブは スイングスピードの速い人用といった考え方が一般的であった。そして、今でも 多くの場合は その考え方で アイアンセットなどは 作られている。つまり、総重量が軽く 柔らかいシャフトのクラブは スイングウェイトも軽めに設定されているのが一般的なのだ。しかし、最近は 色々なシャフトのスペックがあるように そうとばかりは言えないケースも ドライバーや フェアウェイウッドなどで 時々見受けられる。例えば、男子用のドライバーで 重量を 270g くらいまで 軽くして SWt を E5 に設定したり、少し重めのドライバーの バットエンドに カウンターバランス的に 30g 程度のウエイトを装着して 総重量を 350g 超の重いクラブにして SWt を C5 くらいに設定することもある。近年、ツアープロの間では スイングウェイトを C 圏内にまで下げて 重めのクラブを使って 距離を伸ばそうという人も居る。どんな設定がベストかは 個人差があるが、普通とは 違った設定のクラブの方がパフォーマンスがアップすることもある。基本的に 同じ重量であれば スイングウェイトの軽いクラブの方が それを振った時のスイングスピードは 速くなることが確認されているが、それで 安定したスイングが出来て 飛距離が伸びるとは 限らないと言うことだ。因みに、市販されている男子用のドライバーで 最も多いのは 300g 前後の総重量で D1 ~ D2 というスイングウェイトのクラブで、女子用は 260g 前後の C1 ~ C2 のクラブだと言えよう。ただし、女子の場合は 軽めの男子用のクラブとか それに近いスペックのクラブを好む人も少なくないだろう。

高弾道・低スピンのドライバー

ところが 最近のクラブの多くは左右のギア効果だけでなく 上下のギア効果を上手く利用して スピン量を抑えながらも 高弾道のボールが打てるような工夫がなされている。重心深度がある程度以上のウッドのようなクラブでは 低重心にすれば ギア効果を生むフェース面積をフェース上部だけでなく 中心に近いところまで広げることが出来、そうしたデザインで 安定して飛距離の出るボールが打てるように工夫しているクラブもある。また、高弾道・低スピンで 飛ぶボールを打てる工夫としては、より低重心にして重心深度を浅くするという選択肢もあり、クラブによっては そうしたデザイン コンセプトで製造されているものもある。いずれにしても、ヘッドスピードのある人には 高弾道・低スピンという(飛ぶ)ボールをクラブフェースのスウィートスポットか それよりも少し上で打つ限り 打つことが出来るクラブが主流なっていると言うことだ。加えて、低重心のクラブは スウィートスポットより低いところに当たったようなミスショットでも ある程度ボールが上がるという 優れたクラブになるというメリットもある。つまり、この設計コンセプトによって フェースのどこで打っても 今まで以上にボールを飛ばすことが出来るクラブが作れるようになったのである。

このように 重心位置とフェース面の形状を変えることで 飛ぶクラブにも 飛ばないクラブにもなる理屈だが、ボールの打ち出し角やスピン量は シャフトの特性にも大きく左右される訳だから ヘッドだけ もしくは シャフトだけで考えるのではなく 正しい組み合わせで考えることがポイントになることは 言うまでもない。

重心距離と慣性モーメント

一方、重心距離の大きなクラブは 所謂 クラブヘッドの慣性モーメント (MOI) の大きなクラブで フェースがターンし難いクラブになる。別の言い方をすれば、クラブヘッドがシャフトを軸に回転し難くなるということで 引っ掛け難いクラブを作る上で利用できる特性である。つまり、クラブのコントロール性能を考えるには クラブヘッドの慣性モーメントについても考える必要があると言うことだ。慣性モーメントの意味については 慣性モーメントとは のページで詳しく説明しているが、クラブフェースを回転させるために必要な力の大きさが これによって決まる訳だ。フェースターンがし易す過ぎても、また、し難過ぎても 使い難いクラブになるのだが、クラブヘッドの挙動は この慣性モーメント以外にも、別途 詳しく説明しているの重心角、さらに、ヘッドの重量、シャフトの特性(硬さ、トルク、キックポイント)などに影響されるから 非常に微妙なバランスの上に成り立つもので 理解し難いものになっている。

最近の傾向は 低重心で 慣性モーメント(MOI)の大きなドライバーが主流のようだが、ただ単に 低重心だから良いとか、慣性モーメントが大きいから 曲がらないと考えるのは 間違った考え方だと言えよう。どんなクラブが自分にとってベストなのかは そのスイングで フェースローテーションがショットの結果にどのように関与しているのかなど 良く考えてみる必要があるだろう。

トーダウン現象例えば、慣性モーメントが大きなクラブは 引っかけが出難いというメリットがある反面 フェース角が 開き過ぎで正しく設定されていなければ プッシュアウトの良く出るクラブになる デメリットにもなる。 また、写真右のようなクラブのトーダウン現象を助長し 悪影響を及ぼすことにも繋がるなど ただ単に 慣性モーメントの大きなクラブが優れている訳ではない。スイングスピードと重心距離に対する適切なシャフトの硬さとトルクといった関係があるなど、クラブヘッドとシャフトの相性については 様々な側面がある。上級者用のアイアンヘッドが小さくなるのには 幾つかの理由があるが 慣性モーメントとコントロール性能の関係が大きく関与している。また、パターは 慣性モーメントの大きなモデルが多く市場に出回るようになっているが その理由は これで良く理解できるであろう。

最後に、ドライバーのプッシュアウトやヒッカケに悩んでいる人は フェース角や重心角に注目してみると良いだろう。特に 大型ヘッドで慣性モーメントの大きなクラブでは フェース角と重心角が適正にセットされていなければ 悪い結果になるはずで 要注意である。高価なシャフトに交換することを考える前に 鉛によるクラブの調整を試みるなり クラフトマンに相談をして フェース角と重心角の調整を考えてみるのも 一案だろう。

なお、シャフトやグリップを含めたクラブ全体の重心についても考える必要もある。それがよりクラブヘッドに近い所にあれば、同じ総重量のクラブであっても それを振った時の感覚は 重くなる。そして、その度合いを表す指標が スイングウェイトだ。C9 とか D2 などと表記されるものだが それをクラブのバランスと言うこともある。この点に関しては クラブの重量のページで詳しく説明しているので そちらを 参照下さい。 » 詳細

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