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クラブの重心 (ゴルフクラブ選びの知識)
質量の中心 もしくは 重力の作用点が重心 (Center of Gravity) である。物体の重心は常に一定の点で、物体の位置や置き方を変えても その重心の位置は変わらないという特性がある。(ただし、重心は必ずしも物体内部にあるとは限らない。) 例えば、重心を低くすれば 物の座りが良くなるということなどは 誰もが知っている物体の重心に係わる特性であり、起き上がりこぼしなどは そうした特性を上手く利用した おもちゃである。

 
さて、ゴルフクラブにおいては、クラブヘッドの重心が どこにあるのか によって クラブの特性が大きく変わるという事実があり、最近のゴルフクラブは その特性を 目的に応じて最大限に活かそうとするものになっている。従って、自分のスイングに最適なスペックのクラブを選べば 極めて 良い結果が期待出来る訳だが、逆に、不適切なものを 選んでしまうと 結果が出ないどころか 悪影響ばかりが出かねないという危険性さえある。

クラブヘッドの重心

重心 (Center of Gravity)
クラブヘッドの重心は クラブフェースのスウィート・スポット (二次元の概念) とは異なる三次元の概念である。つまり、1) ソールからどの位の高さにあるか、2) シャフト軸からどの位離れているか、3) クラブフェースからどのくらい奥まった位置にあるか といったことである。1) は 重心の高さ、2) は 重心距離、そして、3) は 重心深度という概念になるが、さらに、右図のようにシャフトと重心の位置によって決まる 重心角もクラブの特性に多大な影響を及ぼす。

重心の高さと重心深度は、ボールの打ち出し角とバック・スピンに影響を及ぼすし、重心角は フェース角、そして、サイドスピンに影響を及ぼすことになる。因みに、クラブは上図のように重心がシャフトの真下に来るような位置関係で静止しようとする方向の力が働く訳だが、重心深度が深ければ (ヘッドの大きさが同じであれば) 重心角が大きくなり、フェースが返り易い (ドロー形のボールが出易い) クラブになる訳だ。重心角が大きくなれば スクウェアーに構えたクラブフェースを クローズドな方向に動かそうとするより大きな力が 働くからである。

従って、スライスに悩む人用のクラブであれば、フェースをクローズドにして 重心角を大きくしてやれば良いことになる。最近は、そんなクラブが売られるようになっているが、スライスに悩んでいる人には オススメのクラブだ。しかし、ドロー系のボールが持ち球の人が そうしたクラブを使うと 引っ掛けが多発したり、フックが大きくなりコントロールし難くなったりし兼ねないから要注意。

重心深度の影響は他にもある。それは、打ち放たれたボールの挙動を大きく左右するギア効果 (詳細後述) への影響である。最近のドライバーは 比較的高弾道・低スピンのボールで飛ばすという思想で作られたクラブが主流になっているが、そうしたクラブでは重心深度が極めてクリティカルな役割を果たしているのである。

ギア効果とは トウサイドで打ったボールが フック系の球に、また、ヒールサイドで打ったものは スライス系の球になるという効果で、打ち損ねたボールを ターゲットに戻したり、ボールを故意に左右に曲げたりするのに極めて有効な現象で、これは フェースの凸面の形状 (バルジ) と重心深度によって決まると言われている。一昔前に メタルウッドが上級者に好まれなかった理由は、スチール製のメタルウッドの重心深度が浅いので そうしたボールのコントロールが思うように出来なかったためである。しかし、チタン製ヘッドのドライバーの出現により そうした状況が改善され、コントロール性の優れたドライバーが出来るようになった。

ところが 最近のクラブは 左右のギア効果だけでなく 上下のギア効果を上手く利用して スピン量を抑えながらも 高弾道のボールが打てるようになった。重心深度の深いクラブでは 低重心にすれば ギア効果を生むフェース面積をフェース上部だけでなく、中心に近いところまで広げることが出来るから 高弾道・低スピンという (飛ぶ) ボールをクラブフェースのスウィート・スポットかそれよりも少し上で打つ限り 打つことが出来るようになった。さらに、スウィート・スポットより低いところに当たったようなミスショットでもある程度ボールが上がるという 優れたクラブになるというメリットもある訳だ。昔のクラブは 高弾道にすれば 高スピンになってボールが吹き上がり飛ばすことが出来なかった訳だが、この設計コンセプトによって飛躍的にボールを飛ばすことが出来るようになった訳である。 ギア効果 (Gear Effect) 飛ぶボールを打つ鍵

このようにヘッドの構造 (重心位置) によって 飛ぶクラブにも 飛ばないクラブにもなる訳だが、ボールの打ち出し角やスピン量は シャフトの特性にも大きく左右される訳だから、ヘッドだけ、もしくは、シャフトだけで考えるのではなく、正しい組み合わせで考えることがポイントになることは言うまでもない。

一方、重心距離の大きなクラブは、所謂、クラブヘッドの慣性モーメント (MOI) の大きなクラブで、フェースが返り難いクラブになる。別の言い方をすれば、クラブヘッドがシャフトを 軸に回転し難くなるということで、引っ掛け難いクラブを作る上で利用できる特性である。

つまり、クラブのコントロール性能を考えるには クラブヘッドの慣性モーメント (MOI) についても考える必要があると言うことだ。慣性モーメントの意味については 慣性モーメントとは と言うページで詳しく説明しているが、クラブフェースを回転させるために必要な力の大きさが これによって決まる訳だ。クラブフェースが返り易す過ぎても、また、返り難く過ぎても 使い難いクラブになるのだが、クラブヘッドの挙動は この慣性モーメント以外にも、前述の重心角、さらに、ヘッドの重量、シャフトの特性 (硬さ、トルク、キックポイント) などに影響されるから 非常に微妙なバランスの上に成り立つもので、理解し難いものになっている。

最近のドライバーは 低重心で重心深度が深く、慣性モーメント (MOI) の大きなクラブをどのメーカーも売り物にしているが、ただ単に慣性モーメントが大きいから良いと考えるのは 間違った考え方だと言えよう。自分のスイングで フェース・ローテーションがショットの結果にどのように関与しているのかを良く考えてみる必要があるだろう。

トーダウン現象例えば、慣性モーメントが大きなクラブは 引っかけなどが出にくいというメリットがある反面、フェース角が 開き過ぎで正しく設定されていなかったりすれば プッシュアウトの良く出るクラブになってしまうという デメリットにもなる。 また、クラブのトーダウン現象を助長し悪影響を及ぼすことにも繋がるなど、ただ単に 慣性モーメントの大きなクラブが優れているとは言えない面がある。スイング・スピードと重心距離に対する適切なシャフトの硬さとトルクといった関係が出てくる訳で クラブヘッドとシャフトの相性については そうした側面もある訳だ。

上級者用のアイアンのヘッドが小さくなるのには 幾つかの理由があるが、慣性モーメントとコントロール性能の関係と言うことが大きく関与しているはずである。また、パターに関しては 慣性モーメントの大きなモデルが 最近は 多く市場に出回るようになっているが、その理由は これで良く理解できるようになったはずだ。

最後に、ドライバーのプッシュアウトやヒッカケに悩んでいる人は フェース角や重心角に注目してみると良いでだろう。特に 大型ヘッドで慣性モーメントの大きなクラブでは フェース角と重心角が適正にセットされていなければ 悪い結果になるはずで、要注意である。高価なシャフトに交換することを考える前に 鉛によるクラブの調整を試みるなり、クラフトマンに相談をして、フェース角と重心角の調整を考えてみると良いだろう。

なお、シャフトやグリップを含めたクラブ全体の重心についても考える必要がある。それがよりクラブヘッドに近い所にあれば、同じ総重量のクラブであっても、それを振った時の感覚は 重くなる。そして、その度合いを表す指標が スイング・ウェイトだ。C9 とか D2 などと表記され、それを クラブのバランスと言うこともある。この点に関しては、クラブの重量のページで詳しく説明しているので、そちらも 参照下さい。 詳細