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“ピンにアテンド”
Introduction
2019年の新ルールへの移行で ルールが大幅に改定され その内容の簡略化が進んだ。その条文の構成も 大きく変更され 規則 1 ~ 規則 34 で構成されていた ルールが 新ルールでは 規則 1 ~ 規則 24 という構成になった。例えば、旧ルールで 規則 16「パッティング グリーン」規則 17「旗竿」となっていたものが、新ルールでは 規則 13 「パッティング グリーン」となり、その下に 13.1 グリーン上で認められる または 要求される行動|Actions Allowed or Required on Putting Green と 13.2 旗竿|The Flagstick という条項があって そうした構成で 同じ範疇のルールがカバーされるようになった。

パッティンググリーンの新ルール

新規則 13 の冒頭には「グリーンは ボールを転がして プレーをするために調整された特別なエリアで 旗竿が それぞれのホールにはあり コースの他のエリアとは 異なるルールが適用される」と 記述されている。その異なるルールの最たるものが ご存知のように グリーン上にある ボールは マークをして 拾い上げて 拭くことが出来ることだが、禁止されている行為もあり、特別な配慮が必要になる。特に、旧ルールの下では ルール違反に該当する禁止行為が数多くあったが、その公正性や合理性には 疑問を持たざるを得ないような ルールが幾つも存在し、それらを全て間違いなく覚えておくのも 困難であった。それが 新ルールでは ゴルフの普及に資する (a) ルールの簡略化 (b) プレーのスピード化 の観点から様々な改定がなされ かなり分かり易く フェアーで 合理的なものに変貌した。その新ルールについて簡単に説明しているのが 下の動画である。しかし、多くの人は 気付くことさえないと思うが 実は ピンにアテンドする行為に関しては 非常に 分かり難く、誤解を生むようなルールが まだ残っている。これは それに係わる四方山話(知っていなくとも普通の人は 困らない)である。

ルールの簡略化

パッティング グリーン上のプレーに係わる 新旧ルールの主な変更項目は 以下の 1 ~ 4 の通りである。

  1. パットのラインに触れる行為
  2. グリーン面の損傷の修復
  3. ボールが動いた時の罰則と処置
  4. 旗竿を残したままの パット

ただ、簡略化されて 分かり易くなったとは言え、間違い易いルールが完全に除去された訳ではない。前述のように、旗竿を残したままの パットに係わるルールでは ピンにアテンドする行為について 注意をする必要が残っている。以下で そのルールの解釈と問題点、疑問点について 詳しく お話することにしたい。

旗竿を残したままの パット

前述のように 新ルールの下では ピンを 抜いても 抜かなくとも良い訳だから パットをする時に ピンを残したまま パットをするケースが 多く見られるようになった。しかし、今でもピンを抜くと決めてアテンドしてもらうプレーヤーもいる。そして、ピンを抜くと決めて アテンドしてもらい ピンに球が当たると プレーヤーのキャディーの場合は プレーヤーに、また、同伴競技者の場合は 同伴競技者にペナルティーが科される可能性がある。

これからパットをするプレーヤー (A) とそのピンの傍に立っている同伴競技者 (B) が居て その事実を両者が確認している場合、A-B 2人の間には 何の会話がなくとも そこには B がピンにアテンドした状態で A がパットをするのだという合意があったものと見なされるとのルール上の解釈がある。従って、同伴競技者が ピンに手が届く程の近さに立っている場合 もしくは 自分が パットをする人の同伴競技者として ピンの近くに立つ時は 要注意なのである。

新ルールでは 同伴競技者がピンにアテンドして ボールが ピンに当たった場合、アテンドした人は 偶然 (Accidental) でない限り 2打罰を (旧ルールでは それが故意に行われたのでなければ パットをした人に対して ペナルティが科されたが) 科されることになる。他方で 新ルールでは パットをした人は 無罰であるが ピンに当たる様なナイスパットなのに そのプレーは 無効になり パットをし直さなければならない。それは 新規則 11.2 動いている球が 人によって 故意に (Deliberately) 方向を変えられたり 止められた場合 - Ball in Motion Deliberately Deflected or Stopped by Person の c. (2) Stroke Made from Putting Green. The stroke does not count, and the original ball or another ball must be replaced on its original spot (which if not known must be estimated) に明記されていることである。

ピンに ボールが当たった場合に それが 2 打罰のペナルティーに該当する行為か否かの裁定は どの様な行為がルールに定められるところの deliverate (故意) に該当する行為なのか、また、同様に accidental (偶然) と判断される行為になるのか次第だが、ルールを知らずに ボールが ピンに当たるのを ピンの横に立って 見ていた場合は 偶然とは 裁定されない可能性が高い。このように、パッティング グリーンに係わるルールは 簡略化されたとは言え まだまだ 間違い易い側面が残っているので 競技ゴルフに携わる人は 確り 新ルールの内容を確認し 間違いを犯さないよう 覚えておく必要があるが、以上の点については 以下で さらに詳しく説明する。

ルールの翻訳と解釈

ここで認識して欲しいことは ゴルフルールは 英文を日本語に翻訳したものであるという事実である。JGA のルールブックの翻訳は 全体的に 素晴らしいものだと言えるが 分かり易い翻訳をすることには 限界があるのも事実である。前述のルールに関しては "Accidental" と "Deliberate" という言葉の翻訳が それに該当する。具体的には 以下の通りである。

13.2b (2) 球が旗竿や旗竿に付き添っている人に当たった場合にすること。プレーヤー の動いている球がそのプレーヤーが (1) に基づいて取り除くことを決定した 旗竿に当たった、または その旗竿に付き添っている人 (または その人が持っている物) に当たった場合にどうなるのかについては、それが偶然なのか、故意なのかによる: 以下省略

この文章の原文は 以下の通りだ。(2) What to Do If Ball Hits Flagstick or Person Attending Flagstick. If the player’s ball in motion hits a flagstick that the player had decided to have removed under (1), or hits the person who is attending the flagstick (or anything the person is holding), what happens depends on whether this was accidental or deliberate:

つまり、偶然と故意は 英語では Accidental と Deliberate と表記されている訳だが Deliberate を故意と訳すのが適当かどうかは(Accidental の偶然もそうだが)微妙である。故意という訳だと Intentional の感が強くなる。Deliberate に相当する行為で鍵になるのは awareness の概念である。つまり、抜こうとしたピンが物理的に抜けなかった場合は 事故だから無罰になるが、怠慢でよそ見していた場合は awareness があると同時に accident 的な要素はないので ペナルティになる可能性が高い。爆発音や動物の出現などで よそ見することになった場合は accident に該当すると裁定されるかも知れないが。因みに、Merriam-Webster によれば deliverate (形容詞) は 以下のように定義されている。1 : characterized by or resulting from careful and thorough consideration; 2 : characterized by awareness of the consequences; 3 : slow, unhurried, and steady as though allowing time for decision on each individual action involved である。

それでは ルールを知らずに ピンフラッグの近くに立っていた人が ピンに球が当たるのを見ていた場合は JGA が言うところの偶然なのか、故意なのか? 判断に迷う人が多いだろう。普通の日本語の感覚では 故意とは 言い難いから無罪放免か。しかし、それがルールを知らずに起きたことであれば アクシデントではないから 有罪|guilty になるという解釈をする人も居るだろう。どちらの解釈が正しいのだろう?

ここで JGA が deliberate という言葉を「故意」と翻訳している事実を思い出して欲しい。そこに立っている人は ピンの側に立っていると言う事実と球が転がってピンに当たる可能性があるという事実を認識していた(awareness があった)訳だから ピンを抜かなかった行為は deliberate に該当する。そんな裁定が妥当ということになるだろう。特別な理由なく、抜き忘れれば(故意ではなくとも)ペナルティーが科されるのである。JGA のルールブックで accidental と deliberate を 偶然、故意 と訳しているから起こる疑問と困惑だと言えるのかも知れない。

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