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なくして欲しいゴルフ場利用税

Introduction
ここ十数年 日本のゴルフ人口は 減少の一途を辿った。その背景には 団塊の世代の高齢化や 若い男子のゴルフ離れがあると言われているが、その減少のペースは それだけでは 説明がつかないものだ。ここでは 日本のゴルフ人口が 何故 ここまで急激に減少したのか と言うことについて考察すると共に ゴルフ場利用税の撤廃の必要性について言及する。

日本のゴルフ人口の推移

公益財団法人・日本生産性本部の「レジャー白書 2015」によれば 平成 26年の日本のゴルフ人口(コースで年 1回以上プレー)は 720万人と 平成 13年の 1340万人の 54% にまで減少した。以下のグラフの青線は その間の変化の推移を示したものだ。

一方、オレンジの線は エクセルの予測手法(Excel 2016 FORCAST.ETS)を使って行った将来予測だが、過去 15年間のゴルフ人口の低下のペースが 今後も継続されれば 10年もしない内に 日本のゴルフ人口は 500万人を割り込んでしまうことにもなり兼ねないという危機的状態であることを示している。

総人口減少とゴルフ人口減少

日本の人口は 平成 20年に 1億 2808万 4千人を数え、過去最高を記録した。平成 25年の日本の人口は 1億 2739万 8千人で、今後は 人口が少しづつ減少して行く訳だが、少なくとも 2020年くらいまでの人口増減は ほぼ横這いだ。しかし、高齢社会白書(2016年版)によれば その後は 減少率がどんどん大きくなり 2030年までに 日本の人口は 1億 1662万人(ピーク時の 91.5%)、2040年に 1億 728万人(ピーク時の 84.2%)、2050年には 1億を割り込み 9708万人(ピーク時の 76.2%)にまで減少すると予測されている。つまり、過去 15年間のゴルフ人口の変化は 日本の総人口減少がなかったにも拘わらず見られた現象で 今後 その総人口や ゴルフをする年齢層の人の数が急激に減ることになれば 予測の下限に近いようなペースでのゴルフ人口低下もあり得ると言わざるを得ない状況なのである。

所得とゴルフ人口の関係

前述の レジャー白書によれば 平成 25年までに 日本のゴルフ人口は 720万人までに減少したと推定されるが、日本の人口 1億 2739万 8千人の 13.2% は 14歳以下の子供だから 成人のゴルフ参加率は 約 6.5%、超高齢者を除くと 7% 位と言ことになる。一方、(株)リクルートライフスタイルの じゃらんリサーチセンターが 2014年 2月 4日に発表した「ゴルフ市場に関する実態調査」によれば、20~69歳(全国 25000 サンプル)の人のゴルフ経験率は 30.3%(男性 41.2% 女性 19.5%)で、ゴルフコース経験率は 2割強、最近 1年間に ラウンドした人は 8.7% と言うこと、また、ゴルフ未経験者の 38.0%(20代は 44.7%)が 将来 ゴルフをしてみたいという 所謂 ゴルフ意向者であることが判明したそうだ。さらに、ゴルフ用具普及率が全国平均 34.6% というような統計データ(総務省の全国消費実態調査・2009年)もある。つまり、かなりの割合の人が ゴルフを経験しているが 現在はしていないということ、そして、多くの未経験者が 将来 ゴルフをしてみたいと思っていると言う実態があるのだ。他方、止めてしまった理由に ゴルフに それなりの魅力を感じられなかったという人も居るだろうが 経済的な負担を挙げる人が多いのも事実である。また、ゴルフ未経験者に ゴルフをしない理由を尋ねると その回答のトップは お金がかかりそうだからで ある調査によれば その割合は 62.4% にも達している。

平均給与
国税庁が公開している民間給与実態統計調査によれば、民間企業に勤める人の 2014年の平均給与のは 415万円で、前年に比べ 14000円増えたものの 1997年のピーク時より 52万円以上も 少ないというデータがある。ただし、公務員の給与は 同じ期間に 上昇してばかりいた訳ではないが 近年は 民間給与の約 1.5倍になっている。こうして見ると この 15年間に ゴルフ人口が激減した理由の一つに 民間給与所得者の所得の減少があることは 紛れのない事実だと言える。それは ゴルフをする人の割合が 所得水準に 比例することからも言えることである。因みに、年収 1000万円超の人は その 20% 以上が ゴルフをするというデータもある。

ある求人会社の情報によれば、日本の20/30/40/50代の会社員、男子の平均年収は それぞれ 368/488/616/742万円であり、女子は 324/384/433/479万円だそうだ。これは 2014年 9月~2015年 8月の 1年間に、この会社の転職支援サービスに登録した約 22万人のデータを元に 正社員として就業している 20~59歳までの ビジネスパーソンの平均年収を 年齢や年代、男女別に纏めた結果だそうだ。

余談的な情報だが、ある大学院生の修士論文「スクラッチ プレーヤー(HCP=0)に関する研究」という興味深い論文があるので 紹介しよう。それによれば 年収 1761万円、その 4人に 3人は 自営業者で 年間ラウンド数 152(約 3ラウンド/週)、練習場に 3回/週 というのが スクラッチ プレーヤの プロファイリングである。» 参考

いずれにしても、日本では ゴルファーの多くが 富裕層だという先入観を持たれているのが事実で、それが後述する ゴルフ場利用税がなくならない理由でもある。富裕層の 20% 以上は ゴルフをすると言うことからも 富裕層の多くが ゴルフをすることは事実である。しかし、年収 1000万円以上というのは 総世帯の 11.3% と 少数派であると同時に そのほぼ半数の人は 1200万円以下の ある意味 中産階級である。厚生労働省の平成 22年の調査結果によれば、年収 2000万円以上の本当の富裕世帯は 全体の僅か 1.0% だから、そんな ゴルファーは 日本に 30万人位しか居ないのである。また、1500万円以上に その枠を広げても 全体に占める割合は 2.8% で、その数は 84万人程度。ゴルファーの大多数は 富裕層の人間では 決してないのだ。

勿論、ゴルフのような趣味は 所得の低い人にとっては 大きな負担になるもので、ある水準以上の所得があることが ゴルフをやろう、やり続けようと思うためには必要である。それが 具体的に どの水準かは それぞれの生活環境が異なるから 一概には言えない面もあるが、年収 600万円が ボーダーラインになっているとも言える。そして、ゴルファーの大多数は 到底 富裕層とは言えない 年収 1000万円以下の普通の所得水準の人達で 日本のアマチュア・ゴルファーの平均年収は 700万円程度だとも言われている。

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また、前述の厚生労働省のデータによれば、日本の世帯所得の分布は 600万円台、700万円台、800万円台、900万円台の所得世帯の割合が それぞれ 7.5%、6.1%、5.1%、3.7% で 年間所得が 600~1000万円という水準の世帯は 全体の 22.4% に相当する。この所得水準の人達を母数にし その 20% が ゴルフをすると そのゴルファーの数は 538万人になる計算である。もちろん、600万円以下の所得水準以下でも ゴルフをする人は大勢居る訳だが そうした ゴルファーの多くは 若者か 定年で 既に リタイアした 年金暮らしの高齢者である。65歳以上の高齢者が日本には 3000万人以上いるが その約半数は 75歳以上で ゴルフをリタイアしてしまう人が多い年齢層だから ゴルフが出来る 健康な 60歳以上の人は 3000万人ほど居る計算で その 10% が ゴルフをするとなれば その数は 300万人になる。そう考えると 2020年~2030年における 望ましい(目指すべき 努力目標的な)日本のゴルフ人口が 800~1000万人であっても 決して現実味のない数字とは言えないのだ。

ゴルファーの減少に歯止めを

しかし、そのような数字を実現することは容易なことではない。それは 如何に ゴルフが魅力的なものであったとしても 前述のように ゴルフが お金のかかるスポーツであり、趣味だからである。近年、ゴルフ料金は 需要が低迷する中、供給過多が顕著になり始めており 一時に比べれば遥かに手頃になったものの、それでも まだまだ 高いと感じる人は多く、ゴルフ人口減少の最大の理由になっている。因みに、ある調査では ゴルフコースを選ぶ際に重視するものは何か? との質問に、回答の上位二つは (1) 価格が手ごろ (77.8%)、(2) アクセスが良い (58.7%) であった。また、前述もしたが、ゴルフ未経験者がゴルフをしない理由のトップは お金がかかりそうだからで そうした人の割合は 62.4% と高い。

つまり、ゴルファー数の減少に歯止めをかけるためには まず手頃な価格で 楽しむことの出来るゴルフ環境を整える必要があると言うことだ。もちろん、高級ゴルフクラブが必要ないと言うことではない。選択肢が増えて、若者が普段の生活で ちょっと節約をすれば ゴルフに行けるような そんなゴルフ場も必要なのである。例えば、平日 5000円以下、週末でも 8000円前後で プレーできる 本格的なゴルフ場が増えたら ゴルフを始める人の数が増える可能性は かなり高くなるだろう。他の要因も複雑に影響しているから 確かなことは言えないが ゴルフのハードルが(カムバックする経験者と これから新たに始める人にとって)低くなることは 間違いない。

なくして欲しいゴルフ場利用税

その観点から注目すべき点が ゴルフ料金と 税金の問題である。ゴルフ場が支払ったり、徴収している税金は多い。主なものだけでも、ゴルフ場利用税、消費税、固定資産税、法人税がある。古いデータになるが、日本ゴルフ場事業協会(NGK)による平成 6年の調査では 1コースあたりの固定資産税の平均納税額は 1603万円だそうだ。とは言え、最大の負担になっているのは ゴルフ場利用税である。ゴルフ場利用税は 地方税法に基づき ゴルフ場が所在する都道府県が ゴルフ場を利用する人に対して 1日当たりの定額で課す税金である。(ゴルフ練習場は その対象外)我々が ゴルフ場でプレーする時に支払う料金には消費税が課されるが それとは別に この税金が必ず課される訳で ゴルフ場利用 1日に対する最高税額は 1,200円、標準税額が 800円で、通常、高齢者を除く 成人がゴルフをすると 600円 から 1,200円の利用税が ゴルフ場の等級に従って徴収される。個々のゴルフ場の利用税額は 最高額の範囲内で それぞれの地方自治体が独自に決めることが出来、その税収の 7割は ゴルフ場のある市町村に交付される。

このゴルフ場利用税は ゴルフ料金の低下にも拘らず一定額で課されるから その料金に占める税の割合は 極めて高くなっているのが現状だ。また、9ホールだけのプレーでも 1日分の利用税が課されるから 効率的な ゴルフ場の利用を困難にするという側面もある。効率的な経営資源の有効活用は(政治家や役人がどう考えているかは分からないが)極めて難しくなってしまう。そんなことだが、ここで 昼食と税金コミで 5000円(ゴルフ場利用税がなければ 4400円)といった低料金のゴルフ場のケースで どれだけ税金が課されているのか その内訳を見てみよう。

 ・ ゴルフ場利用税 600円
 ・ 昼食 1000円(内 8% 消費税 74円)
 ・ プレー・フィー 3400円(内 8% 消費税 252円)

このケースの税金総額は 926円だ。率にして 926 ÷ 4074 = 22.73% である。仮に、このゴルフ場が 人が入らないからといって 4000円に料金を下げたとしても、ゴルフ場利用税 600円は 変わらないから 税金の割合は 852 ÷ 3148 = 27.06% にもなる計算だ。プレー・フィーには 消費税も課される訳だから二重課税である。さらに、各種割引や無償で提供しているサービス、予約手数料などを差し引くと 実際に ゴルフ場の懐に入る収入は さらに減額される訳だから ゴルフ場の経営が 如何に困難なのかは 想像に難くなかろう。

今後も ゴルフ人口が減少し続ければ ゴルフ場に客を入れるためには 料金を下げる以外になくなり、それをしなければ ゴルフ場には 閑古鳥が鳴くことになり兼ねない。そんな状況で 現行のゴルフ場利用税の制度を継続すれば ゴルフは 本当に ほんの一部の金持ちの趣味になり、そうした人達が行くゴルフ場だけになってしまうだろう。ゴルフ人口が激減し、しかも、残るゴルフ人口の多くが高齢者として ゴルフ場利用税を払わなくなる訳だから ゴルフ場利用税と言う財源に依存する市町村の財政は 一気に苦しくなるだろう。さらに、そうした市町村は ゴルフ場利用税という歳入が大幅に減るばかりか 様々な 新たな問題に直面することだろう。それは ゴルフ場の倒産・封鎖による 直接、間接的な経済への打撃と雇用の消失、そして、さらなる税収基盤の縮小である。ゴルフ場が これからも生き残れるように 地方自治体は ゴルフ場利用税撤廃に賛成するくらいの発想の転換が必要な時が来ているのだ。どのようにして WIN-WIN の関係を作っていくか。それが ゴルフ場と地方自治体(税制の変更に関しては 国も)に課せられた課題である。

1989年に消費税が導入された時に廃止された娯楽施設利用税だが、ゴルフだけは その時に 担税力があるからという理由で ゴルフ場利用税という名前に変えて残されてしまったという経緯がある。しかし、ゴルフ人口減少、料金低下、そして、会員権の収入や名義書き換え料収入が激減した ゴルフ場にとっては 1989年当時とは 比べ物にならない厳しい経営環境が 今は ある。社用で ゴルフをする人が激減したという状況もあり、ゴルフ場側にも ゴルファー側にも 担税力があるという状況ではないことは 明白である。大衆スポーツとしてのゴルフが 日本から消えてしまわないように ゴルフ場利用税の撤廃がなされることを 切に願うものである。

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