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フェデックスカップ|フォーマットと賞金

Introduction
テレビなどで PGA ツアーの試合を見ている人なら フェデックスカップと フェデックスポイントの話は よく耳にするだろうから 大体 それが どんなものかは ご存知だろうが ザッと説明すると それは 物流サービス大手のフェデラルエクスプレス社が スポンサーになって 2007年から行われるようになった 米国男子ゴルフツアーのシーズン・チャンピョンを決めると同時に 各選手のそのシーズンのパフォーマンスと成績を決める戦いでもある。シーズンを通して 所謂 フェデックスポイントの争奪戦を行い、その獲得ポイントの上位 125名の選手には 来シーズンのシード権が与えられ トップ 70名の選手だけが プレーオフに進出する。

そのシーズンエンドに行われる 3試合 (2018年までは 4試合 / 125名) から成るプレーオフシリーズの戦い 及び その最終戦となる ツアー選手権 (Tour Championship) が終わると年間チャンピョンが決まると言うものだが、そのプレーオフと最終戦の試合のフォーマットと賞金は 2019年から大幅に変更された。

賞金総額 7,000万ドル

多くの人に知られている変更点は 元々巨額の 3,500万ドルというフェデックスカップの賞金総額が倍増され 7,000万ドル (約77億円) になったことである。倍増と聞くと驚く人もいるだろうが、変更は それだけではなく ちょっと 分かり難い。その主な変更ポイントは プレーオフシリーズの戦いが 4試合から 3試合に減り 最終戦であるツアー選手権の賞金がフェデックスカップの賞金になって その賞金総額が 6,000万ドルになったこと。その結果、賞金の分配という意味では より複雑なシステムになったが レギュラーシーズンの累積 FedEx ポイントで トップ 10 の選手に プレーオフの結果に関係なく 総額 1,000万ドル (1位の選手には 200万ドル) の賞金が順位に応じて分配される。さらに、プレーオフ 1戦 (125名 → 70名)、2戦 (70名 → 30名) を通じて プレーオフ最終戦に進む選手の数は 30 名に絞られるが、その最終戦となるツアー選手権は 賞金総額 6,000万ドル (優勝 1,500万ドル) と言う前代未聞の賞金の争奪戦になる。ツアー選手権は それまでの戦績に応じてボーナスポイントが与えられるハンデ戦 (詳細後述) になるが 出場者全員に優勝のチャンスがあるフォーマットで戦うことになる。それまでのトップ5人にしか自力での優勝のチャンスのないシステムとは違い プレーオフ最終戦に残った選手は 応分のハンデを背負うとはいえ 誰しもが 1,500万ドルの優勝賞金を手にする可能性があるフォーマットだ。それに 総額 6,000 万ドルという大きな額を 30名の選手で奪い合う訳だから2位以下の選手の取り分も半端でない。因みに、2位から5位までの選手は それぞれ 500万ドル、400万ドル、300万ドル、250万ドルという賞金を手にする。仮に、レギュラーシーズンを1位の選手が、フェデックスカップでも優勝した場合は、フェデックスカップの賞金だけで 1,700万ドルを獲得できる計算で それに レギュラーシーズンとプレーオフの2試合の賞金を加えると年間 3,000万ドル以上の賞金を獲得することも可能になった訳だ。

ものすごい賞金の増額のように見えるが 実は トリックもある。旧システムのプレーオフでは 4試合の賞金と フェデックスカップの最終戦の順位に応じて支払われる賞金 それぞれ 900万ドル x 4試合 = 3,600万ドル (2018年) と 3,500万ドル (2018年 フェデックスカップ賞金) で 合計 7,100万ドル (約 78億円) の賞金が支払われていた。一方、新システムでは レギュラーシーズンのトップ 10 の選手に 1,000万ドル、プレーオフ 1戦と2戦の賞金として 950万ドル x 2試合 = 1,900万ドル、さらに、フェデックスカップ最終戦の賞金 6,000万ドルであるから 合計 8,900万ドルが その賞金総額である。従って、純増は 3,500万ドルではなく 1,800万ドルなのだ。とは言え、この最終戦であるツアー選手権の興奮は それまで以上のものになっている。

レギュラーシーズン

レギュラーシーズンは 10月の第一戦 セーフウェイ オープンに始まり 9週、その後、年が明けてから 8月始めの最終戦となる Wyndam Championship までの 35週。その間に行われる試合で獲得するフェデックスポイント上位 125位までの選手が 来シーズンのシード権を獲得し その次の週に行われるプレーオフの第 1戦 (The Northern Trust) に進出する。なお、126 ~ 200位までの選手は 入れ替え戦となる Korn Ferry Tour (旧 Web.com Tour) Finals へ。プレーオフの最終戦は 8月の最終週に行われる。

レギュラーシーズンの試合から獲得できるフェデックスポイントは フィールドのレベルに応じて 優勝者の獲得ポイントが 300 ~ 600 (通常 500) ポイントに定められており、賞金の分配同様、下位の選手には 順位に応じて優勝ポイントの何パーセントという形で (例えば、2位には 1位の 60%) ポイントが配分される。何れにしても、各選手は シーズンを通して この累積獲得ポイントで上位になることを目指して戦うことになる。

因みに、2019年のプレーオフ第 1戦 (The Northern Trust) は 8/8 〜 8/11 にマンハッタンのビル群をハドソン川を挟んだ対岸に臨むリバティーナショナル (Liberty National G.C.) で行われる。レギュラーシーズン最終戦のウィンダム選手権 (Wyndam Championship) 前週に行われた WGC FedEx St. Jude では ブルックス・ケプカ選手が優勝し 550 ポイントを獲得した結果、その時点の順位とポイントは 1位 Brooks Koepka 2,887 - 2位 Rory McIloy 2,315 - 3位 Matt Kuchar 2,313 - 4位 Xander Schauffele 1,858 - 5位 Gary Woodland 1,795 となっている。従って、2位に 500ポイント以上の差をつけたケプカ選手のレギュラーシーズン1位 (ボーナス賞金 200万ドル) が確定している。なお、同時点での松山英樹選手の獲得ポイントは 969ポイントの 29位である。

プレーオフ

前述のように レギュラーシーズンの累計獲得ポイントが 1位から 125位の選手がプレーオフに進出し その第1戦の THE NORTHERN TRUST に参戦するが ここからは レギュラーシーズンの 4倍のフェデックスポイント (優勝 2,000 ポイント / 2018年までは 5倍の 2,500ポイント) が与えられる。そして、第1戦が終わった時点での累計ポイントが 70位までの選手が プレーオフの第2戦である BMW Championship に進むことに。2019年の BMW Championship は シカゴのメダイナカントリークラブ (Medinah C.C.) で行われるが この大会では 2日目の予選落ちはなく 4日間を戦い その結果で上乗せされるポイントを加えた累計で 上位 30位までの選手が さらに アトランタのイーストレイク (East Lake G.C.)で開催される 最終戦の Tour Championship に進む訳だ。

順位 ハンデ
1 -10
2 -8
3 -7
4 -6
5 -5
6-10 -4
11-15 -3
16-20 -2
21-25 -1
25-30 0
ストロークハンデ

2018年までは この最終戦を始める前に ポイントを 1位から順に 2500 - 2250 - 2000 - 1800 - 1600 と再配分し 30位の選手に 210 ポイントを配分するフォーマットだったが、2019年からは それが大幅に変更され 順位に応じて 右表のようなストロークのハンデが与えられ 最終戦がスタートする。今までのフォーマットでは 最終戦の優勝ポイントは 2500ポイントだから 5位以内の順位で最終戦を迎えた選手は 最後に優勝すれば 無条件で 年間チャンピョンになれた。一方、下位の選手でも 上位の選手の成績次第では 最終戦に優勝すれば 年間チャンピョンになるチャンスは 残る仕組みだったが、上位の選手がそこそこ良い成績であれば 最終戦に優勝しても 年間チャンピョンにはなれなかった (この後のフェデックスカップの記録参照) ということが何度か起きている。そうした経緯もあって 2019年からのフェデックスカップでは 下位の選手が優勝するのは ハンデが大きくなればなるほど難しくはなるものの 不可能ではないフォーマットになった。第2戦が終わった時点の順位に応じて与えられる ストロークのハンデは 表のようになっているが このハンデを4日間でひっくり返せば 出場選手は 誰でも 優勝できる仕組みだ。そして、最終戦に優勝さえすれば それまでの戦績には関係なく 年間チャンピョンになって 1,500万ドルの優勝賞金を獲得できる。

FedEx Cup のディレンマ

フットボールのスーパーボールや 野球のワールド シリーズのようなプレーオフをイメージして始まったフェデックスカップのはずであるが それほどの盛り上がりに欠けるフェデックスカップ。それは ファンを引き付けるための二つの命題、即ち、1) シーズンのチャンピョンを決める戦いであること、そして、2) 誰が勝つのだろうかという気持ちでファンが最後まで見て楽しめるイベントであること、この二つを同時に実現することが出来ないディレンマに陥っているからのように思える。

2007年は タイガー・ウッズが まだまだ 他の選手を圧倒していた時代で レギュラーシーズンを終えた時点で ウッズのポイントが 他の選手を大きく引き離すことが予想され 実際に そうしたことが起きた。そんな状況下、レギュラーシーズン終了時に ポイントの調整を一度行い、1位と 2位以下選手の持ち点差を少なくして プレーオフシリーズの 4戦を戦わせ、チャンピョンを決定するというシステム、つまり、レギュラーシーズンの成績は ある程度重要だが プレーオフの 4試合のパフォーマンスが チャンピョンを決める というシステムで「シーズンチャンピョンを決める戦い」という観点からは ある程度 理に適ったものであった。そして、2007年には ある意味 読み通り タイガー・ウッズが レギュラーシーズンで 他を引き離し プレーオフの最終戦にも勝ち、初代フェデックスチャンピョンになったが タイガーは プレーオフの初戦に参戦しない という主催者側の予想外のことが起きた。

その結果を受けて 2008年のシーズンには シーズンエンドのポイント調整で 1位と それ以下の順位の選手の持ち点の差がより小さくなるようにし プレーオフの戦いに トップの選手が参戦しないことのペナルティーが非常に大きくなるようにシステムが変更された。結果、2008年に プレーオフの試合をスキップする選手は居なかったが 今度は ビジェイ・シン (Vijay Singh) の優勝が プレーオフの第4戦を行う前に決まってしまった。それで、今度は 2009年に 必ず 最終戦まで 優勝者が誰になるのかが決まらない 次のシステムへと変更された。。

しかし、そのシステムは 既に説明したように その最終戦を前に ポイントを 1位から順に 2500 - 2250 - 2000 - 1800 - 1600 と再配分し、30位の選手には 210 ポイントを配分するシステムである。つまり、第4戦のパフォーマンスの比重が 極めて 高くなっており 見ている側にとって フェデックスカップ チャンピョンが そのシーズンの本当のチャンピョンであるという意味では 受け入れ難いシステムになってしまったとも言えるだろう。以下は フェデックスカップの記録であるが 一時は レギュラーシーズン (RS) の順位が低い選手が最終戦のツアーチャンピョンシップ (TC) に勝って フェデックスカップのチャンピョンになるという結果が良く見られていた。

フェデックスカップの記録
年度 チャンピョン RS 順位 TC 順位
2023 Viktor Hovland 7 1
2022 Rory McIlroy 1 1
2021 Patric Cantley 6 1
2020 Dustin Johnson 15 1
2019 Rory McIlroy 2 1
2018 Justin Rose 4 2
2017 Justin Thomas 2 2
2016 Rory McIlroy 36 1
2015 Jordan Spieth 1 1
2014 Billy Horschel 69 1
2013 Henrik Stenson 9 1
2012 Brandt Snedeker 19 1
2011 Bill Haas 15 1
2010 Jim Furyk 3 1
2009 Tiger Woods 1 2
2008 Vijay Singh 7 22
2007 Tiger Woods 1 1
RS 順位 = レギュラーシーズン終了時 順位; TC 順位 = 最終戦 順位

2019-2020年シーズンは レギュラーシーズン終了時に 15位だった Dustin Johnson が プレーオフ第1戦の Northern Trust に優勝し、2戦目の BMW Championship でも2位に入り、さらに、最終戦の Tour Championship でも優勝している。つまり、プレーオフで絶好調だった Dustin Johnson が 最後に 他を圧倒する形で FedEx チャンピョンになった訳だ。2020-2021年のレギュラーシーズンは Collin Morikawa が レギュラーシーズンを1位で終了し プレーオフに突入しそうだ。

以上からも分かるように 誰が勝つのだろうかという気持ちでファンが最後まで見て楽しめるイベントになっていることは 間違いないが シーズンのチャンピョンを決める戦いになっていないのは 明白で 当に そのディレンマに陥っていた。2019年のフォーマット変更で そのディレンマから完全に解放される訳ではないだろうが 少なくとも レギュラーシーズンの結果をベースに賞金が与えられ、最終戦に勝った者がチャンピョンになるという より合理的なフォーマットになったことは 評価されるべきだろう。

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