
ボールの位置とクラブヘッドの置き方

♦ 正しいボールの位置
まず、ボールの位置については 従来 二つの考え方がある。即ち、(1) 右利きの人がドライバーを打つ時は ボールが左足かかとの内側の前に来るように スタンスを取り、ショートアイアンでは スタンスの中央、また、他のクラブは スタンスの広さに応じて 相対的に中央よりやや左側に置くというもの、そして、(2) ボールは どんなクラブでも 左足かかとの内側の前に置くようにし、スタンスの広さを 長いクラブでは 広く、そして、短いクラブでは 狭くする(ベン・ホーガン流)というものである。ただ、最近では (1) のように教えるのが一般的で、加えて、ドライバーでも 体重移動をミニマムにするのであれば ボールを左足かかとの内側より少し内側に置くという理論もある。
また、スタンスの幅や向き(オープン、スクウェアー、クローズドなど)については 大きなクラブでは スタンス幅を広くし、短いクラブでは 狭くするのが一般的で、ベン・ホーガンなどは 大きなクラブでは クローズドに、そして、小さなクラブでは オープンにスタンスを取って セットアップするのが良いとも言っている。
♦ 体重のかけ方と重心の位置
しかし、良く考えて見ると、ゴルフのアドレス、つまり、セットアップの仕方を考える上で考慮すべきことは ボールの位置とスタンスの取り方の他にも色々とある訳で、それらの条件を変えることによって、例えば、ボールの位置の考え方も変わるべきである。
例えば、左足に より体重を乗せるようにして 体の重心(おへその少し下にある)の位置を少し左寄りに置いた場合は ボールの位置も 重心の真下くらい(真ん中より左)に来るようにすれば良い訳である。 基本的に アイアンショットの場合は スイングのほぼ最下点か それよりも少し右にボールが来るように スタンスを取って構えれば良いことになる。つまり、ベン・ホーガンは ショートアイアンは より左足体重で打つべきで ボールの位置は 応分に左足寄りにすべきだという考え方である。
一方、前述もしたように 最近では ドライバーでも 体重移動をミニマム(ダウンスイングで 腰を大きくスライドさせないスタイル)にするのであれば、ボールを左足かかとの内側より少し内側に置くという理論になるのは むしろ 自然なことだと言えよう。上述の (1) と (2) という二つの理論が良く知られて入るものの、それ以外にも 異なる考え方が存在するのは そうしたことを理解すれば 不思議なことではないのである。
♦ ヘッドの置き方とフェースの向き
ところで、同じようにクラブを握っても 手と腕を何処に どのように置くかによって クラブフェースの向き、そして、ソールの据わりは 変わってくるものだ。手の位置を前後左右に、また、腕を少しロールさせたりすることで クラブフェースの向きは 大きく変わるが、フェースがスクウェアーで ヒールやトーなど ソールの一方が浮かずに 確り地面に接地するようにクラブを置くのが基本である。正しくクラブが置けなければ、クラブを正しいスイングプレーンに乗せ 合理的なフェースコントロールをすることは 必然的に難しくなる。
フェース面の向きに関しては アドレス時の見た目の問題だけでなく、インパクトで クラブフェースがスクウェアになるようにセットアップするという観点から理解を深める必要がある。つまり、同じクラブの握り方をしても、手と腕の位置一つでクラブフェースは オープンにもクローズドにも見える訳だから、本当にスクウェアな構え方というものが何なのかを良く考えてみる必要があるはずだ。


一方、バンカーショットでは フェースを開いてバウンスを使ったショットをしたい訳だから ハンドレートな状態で クラブをオープンにして握ってやれば クラブフェースは インパクトの時に よりオープンになって、ソールを上手く使ったショットが出来るという理屈になる。バンカーショットでは ハンドレートにしてフェースを開いてから グリップする。それが正しいセットアップをするためのコツである。
アドレス時のフェースの見た目については さらに 考えて欲しいことがある。例えば、(3) や (4) のようなセットアップをする人は 常に 自分は 幾分フェースをクローズドにしていると思っている人が多く、それで真っ直ぐにボールが打てると考えている訳だが、実は フェースは ほぼ スクウェアなのである。しかし、自分は フェースをクローズドにして構えているという意識があれば 色々な意味で 方向感覚を狂わせる原因になるだろう。従って、そうした見た目と思い込みの問題を解決できるよう 色々な工夫が必要になる。少しハンドファーストにしてスクウェアになっていることを確認し それから グリップの位置を 体の中央に変えて (3) のように 構える方法も一案であろう。アドレスで 視覚的によりスクウェアなイメージが湧くような工夫をすることを オススメしたい。
♦ ボールを曲げたい時
さらに 応用問題になるが、インテンショナルなフックやスライスを打ちたい時は 以上の理屈を利用して よりフェースが意図した方向を向くようにすべきである。つまり、フックボールを打ちたいのであれば ハンドファーストの状態でフェースをクローズドにしてクラブを握るべきだし、その逆に スライスボールを打ちないのなら ハンドレートでフェースを開いてクラブを握ってやれば良い訳だ。構えた時のフェースの向きでなく、インパクト時のフェースの向きが全てだと言うことを お忘れなく。
このようにセットアップの仕方に関与する要素は多いが、重要なことは 1) 体の重心とボールの正しい位置関係を確保すること、2) スイングを通してクラブフェースがボールとターゲットに対してスクウェアーな(ボールを曲げたい時は それに応じた)関係を維持できるようなクラブの握り方(グリップ)と構え方(特に、クラブヘッドの置き方)、そして、スイングが出来るように工夫することである。
スイングを通じて体の回転の中心がどこにあるのか、そして、クラブフェースの位置と向きがどのようになっているのかということが正しく感じられるようになれば 良いショットが出来る可能性は高くなる訳だから それが出来るようなセットアップの仕方ということを考える意義は 大きいはずだ。中・上級者の人には 前述もしたインテンショナルにフックやスライスを打つ時のクラブの握り方、グリップの仕方についても 以上の考え方を応用して 意図したショットに適したセットアップの仕方が どうあるべきかについても研究して欲しい。
最後に、スライスに悩んでいる人へのアドバイスであるが、そうした悩みのある人は クラブの握り方(グリップ)とクラブヘッドの置き方について良く見直して欲しい。右手の V が右肩を指すように握っていても、実は ウィークグリップの構えになっている可能性があるから、クラブを握る時に クラブのグリップを左腰の前に置いて(シャフトが左に傾くようにして)グリップをするようにすれば ストロンググリップでクローズド気味にクラブを握りやすくなり 良い結果が期待できる可能性が高くなろう。逆に、インテンショナルにスライスを打ちたい時は 右腰の前で(シャフトが右に傾くようにして)グリップするようにすれば ウィークグリップでフェースをオープンにしてクラブを握りやすくなるという理屈である。
いずれにしても、重要なことは バックスイング そして ダウンスイングを通じてクラブフェースがスクウェアに(ボールを曲げたい時は そのように)なるイメージでクラブが振れるようなセットアップが出来るようにするこで、それが何時も上手く出来るプリショットルーティーンを確立することも研究して欲しい。