マスターズの賞金と入場券
♦ マスターズの賞金
マスターズの賞金総額は 2019年に前年比で 50万ドルアップして 1,150万ドルになった。その結果、優勝したタイガー・ウッズは 207万ドルの賞金を手にした。そして、2020、2021年の賞金総額には 変化がなく、その優勝賞金は 207万ドルで、優勝したダスティン・ジョンソンと松山英樹も同額の優勝賞金を手にした。 なお、マスターズの賞金総額の配分は 他の PGA の一般的なトーナメント同様、賞金総額に対して 1位 = 18.0%、2位 = 10.8%、3位 = 6.8% という比率だから、例えば、5位の選手への賞金は 46万ドル、円に換算すると $1 = 110 で 5,060万円になるが これは 日本オープンの優勝賞金 4000万円を上回る額である。因みに、5位以下の賞金配分は 5位 = 4%、10位 = 2.7%、20位 = 1.3%、30位 = 0.68%、50位 = 0.252% である。ただし、50位タイの予選カットライン以下だった プロ選手にも 賞金(最下位は 0.1% = $11,500)が出る点は 他のトーナメントと 少し異なる。
♦ 優勝賞金増額の推移
年度 | 優勝賞金 |
2019 | $2,070,000 |
2017 | $1,980,000 |
2015 | $1,800,000 |
2010 | $1,350,000 |
2000 | $828,000 |
1990 | $225,000 |
1980 | $55,000 |
1970 | $25,000 |
2019年は タイガー・ウッズが暫くぶりの優勝を果たし、2020年のマスターズのチケットの市場価格は 以上なまでに高騰していた。2年前の 2018年のマスターズは 3年ぶりにタイガー・ウッズが出場すること、また、前年は怪我で欠場して 優勝すればグランドスラム達成のローリー・マキロイも出場することで その入場券の価格が高騰し、定価 $375 の 4日間入場券の大会開幕直前のセカンダリーマーケットでの価格は $7000 を超えるという記録的なものになったそうだ。所謂 "Tiger Effect" もあったのだろうが この大会を直に見てみたいという人達の数と関心の度合いは 特別なものである。
♦ マスターズの収支
ただし、世界中のゴルフファンから注目されているマスターズの収益率は 突出している。少し情報が古くなった観もあるが、米 ゴルフダイジェスト誌によれば 2015年のマスターズでは 1億 1,500万ドルの収入があり、2,900万ドルの利益を出したと言うのだ。その 1億 1,500万ドルの収入の内訳は グッズ ($47.5 million)、チケット ($34.75 million)、国外のテレビ放映権 ($25 million)、飲食関連 ($7.75 million) で、国内のテレビ放映権とタイトルスポンサー収入は 別枠である。そう考えると、もっと利益が出ているようにも思えるが 当事者のマスターズ委員会は そうした情報を開示しておらず 本当のところは不明である。アメリカ国内のテレビ中継は golden hour を CBS が、また、その他時間帯を ESPN (Disney) が放映している。因みに、そのテレビ中継では 放映時間中の宣伝時間が 1時間に 4分以下に抑えられる契約だそうだが、2015年の時点でマスターズ最終日の CBS 中継のアメリカにおける視聴率をお金に換算すると 1億 4,000万ドルの価値があるという試算もあった。
一方、マスターズの賞金は テレビ放映権 (65%) とタイトルスポンサー料 (35%) の収入から支払われるとも報じられているが そのタイトルスポンサーの筆頭には AT&T、IBM、Mercedes-Benz (過去には ExxonMobil)、加えて、UPS、Rolex という企業が名を連ねており、筆頭の 3社が支払っているタイトルスポンサー料は 600 ~ 800万ドルだとも言われている。これらの情報がすべて本当だとすれば 賞金には 総収入の数パーセントしか支出していないことになる。
♦ マスターズの入場券
マスターズの一般入場希望者に対してのチケット販売はインターネットによる抽選で行われるが、その 2016年の価格は 練習ラウンドが $65、本戦が $100 (2021年は $115) であった。しかし、この額面で チケットを購入するのは 至難の業で、どうしても観戦したいのであれば Razorgator.com のようなサイトかダフ屋などのセカンダリーマーケットで購入することになる。フォーブス (Forbes) 2016年 2月 22日の記事では その様子を次のように記述していた。
ただし、2017年のマスターズのチケットの価格を Razorgator.com で(2016年 4月 21日現在)見てみると 月曜日の練習ラウンドの最も安い半日券が $307、そして、一日券のホスピタリティ券(一部のサービスは このチケット保有者へのみ提供される)は $747 もしている。別のソースでは 2016年の状況を 次のようにも報じているが こちらの記事の方が実態を表しているようにも思える。
つまり、マスターズの入場料は どのようにして チケットを購入したかによって大きく異なる訳だが、場合によっては 練習ラウンドのチケットなら 2万円程度で買える可能性もあるが、一方では それが 10万円以上になることもある。そして、日曜日のチケットが 最も高くなる。因みに、2018年には 定価 $375 の 4日間入場券の大会開幕直前の価格は "Tiger Effect" で $7000 を超える記録的なものにまでなったのだ。
マスターズ観戦入場者数は 毎年 練習ラウンドで 40,000人、本戦になると 50,000人程度になる。その人たちの多くは そこでしか買えないマスターズグッズを買いまくるそうだから 4,750万ドルもの売り上げになる。7日間で この数字を売り上げるのだから 1日当たり $679万ドルで、それを 40,000人で割ると 一人が約 $170の買い物をする計算だ。グッズ売り場には長蛇の列ができ、その列で 1時間以上待たないと買い物ができないことも珍しくないそうで、全米オープンのような大会の状況と比べても大きく異なると言える。
一方、会場で売られている飲み物や食べ物は 近年一部価格がアップしたもののリーズナブルである。例えば、サンドイッチ $1.50 ~ $3.00、アイスティー $2.00、ソフトドリンク・水 $2.00、ビール $4.00 / $5.00 といった具合だ。こうしたアイテムで それ以上に利益を出す必要がないのであろう。
マスターズの情報として、日本で報道されていた「マスターズは事前に賞金総額が決まっておらず、3日目までの入場券収入などを元に算出される。」という話は(その状況に応じて賞金額が変わってしまうというニュアンスのある記述で)俄かに信じ難いものである。少なくとも、入場券の販売は その遥か以前に完売で終了しているし 大会中に決まる収入以外の収入が賞金総額の何倍もあって 資金は潤沢にあるという事実もあるからだ。
♦ オーガスタナショナル G.C.会員
以上のことからも マスターズの人気が高いことは 明白であるが、もう少し マスターズに纏わるお話をしよう。マスターズが行われる オーガスタ ナショナル ゴルフクラブのことだが、このクラブの入会金は $25,000 で、年会費は $10,000、会員の定数は 300人と言われている。これらの数字は アメリカの大都市周辺の プライベート クラブのものと大差ないレベルだが、ご存知のように、このクラブの会員は 招待された人のみに限られる。歴代の大統領で会員だったのは アイゼンハワー (Dwight David Eisenhower) 大統領だけである。2014年には 17番ホールにあった アイゼンハワー・ツリー(Ike's Tree)が撤去されたが そのことを知っている ゴルフファンは 少なくないだろう。
最後に 蛇足的なお話になるが、マスターズの第 1 回と 3 回のチャンピョンになったホートン・スミス (Horton Smith) のグリーン ジャケット(後日 グリーン ジャケットの授与が恒例行事になった 1949年に 本人に渡されたもののようだ)が 2013年に オークションに出された。その落札価格は 何と $682,229.45 だったそうだ。